昨年11月に始まった南赤道縞攪乱(SEB攪乱)は、4ヵ月余りの活動で木星面全周を
取り巻き、淡化していたSEBを元の濃く太いベルトに変化させてしまいました。2
月末には、攪乱本体である中央分枝の先端が大赤斑(GRS)に到達し、大赤斑から
攪乱発生源のII=300°付近までの120°区間では、赤茶色のSEBが完全復活を遂げ
ています。残りの区間では、まだベルトの中央部分(SEBZ)が明るく見えるものの、
南北両分枝の活動によってSEB北組織(SEBn)とSEB南組織(SEBs)の厚みが増してい
て、SEBZはしだいに狭くなりつつあります。
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[図1] 2月以降の大赤斑周辺の変化 大赤斑が赤斑孔に変化し、中央分枝が後方のSEBを埋めて行く様子に注目。 月惑星研究会の観測から伊賀祐一氏が作成した組画像を筆者が抜粋・編集 |
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大赤斑は観測条件の悪化に伴い、楕円形の本体を認めることができなくなってい
ます。2月末〜3月初めの様相は、南側を濃いアーチで囲まれた赤斑孔(RS Hollow)
で、内部は薄赤く濁っています。アーチの先端はストリーク(streak)となって大
赤斑前方の南熱帯(STrZ)に伸びているようです。
北分枝と南分枝が接近している大赤斑の真北では、今年初めから両者の相互作用
による顕著な模様がしばしば出現しています。2月も赤斑湾(RS bay)の中央から
後方が青黒く縁取られ、特に17〜18日には、大赤斑の真北と後端、さらにやや後
方のSEBsの3ヵ所に真っ黒な暗斑が現れ注目されました。しかし、2月末に中央分
枝が大赤斑に到達してからは、顕著な模様は少なくなり、青みも見られなくなっ
ています。
II=65°付近に位置する永続白斑BAは、以前にも増して小さく薄暗くなり、北半
球のほぼ同じ経度にある北赤道縞(NEB)北縁にある白斑WSZよりも目立たなくなっ
ています。
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[図2] 小さくなった永続白斑BA 矢印部分にBAがある。NEB北縁の白斑(WSZ)よりも小さい。SEB上の黒点はイオ。 撮像:池村俊彦氏(愛知県、38cm) |
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NEBは2009年後半以降、幅広いベルトとなっていましたが、最近は大赤斑の北側
で北縁が淡化して、元の太さに戻り始めているようです。また、ベルトの赤みが
強くなり、北部には4つの白斑と5個のバージ(barge)が認められます。これらの
特徴は、拡幅現象の余波であり、NEBの活動サイクルの一部を構成する現象です。
北温帯縞(NTB)も徐々に淡化が進行しており、南組織(NTBs)はほとんど見えなく
なっています。II=350〜60°に見られる細いベルトは、北組織(NTBn)の断片です。
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