2011-12シーズン最初の観測は、24日の最上氏(東京都)によって行われました。
撮像時刻はなんと01時UT(日本時間で午前10時)ですから、完全な日中の観測です。
木星は表面輝度が低いので、太陽の強烈な散乱光を受ける日中は、撮像できると
は思っていませんでした。驚きです。その後、27日と28日の明け方には阿久津氏
が観測しています。阿久津氏の画像はフィリピンという地の利によって、木星面
の概略をつかむことができます。
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[図1] 今シーズンの木星面 左) 赤斑孔となった大赤斑、北側の黒点はイオの影。 右) 不明瞭な永続白斑BA、NEB北縁の白斑WSZの方が顕著。 撮像(左右とも):阿久津富夫氏(35cm、フィリピン)。 |
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南赤道縞(SEB)攪乱により復活したSEBは、幅広い二条のベルトとして見られます。
攪乱主要部となる中央分枝の活動が見られたII=200°台は、不規則な濃淡は残っ
ているものの、明るい白斑は姿を消しており、活動は概ね収まっているようです。
また、中央分枝が届いていなかった大赤斑前方のSEBは、南北組織が濃く目立ち、
間のSEBZが薄明るくなっています。
大赤斑(GRS)は周囲を暗いアーチで囲まれた赤斑孔(RS Hollow)となっています。
内部はかなり薄暗く、赤みが残っているようです。アーチは大赤斑の南から前方
に向かって伸び、SEB南縁に沿ってストリーク(dark streak)を形成しているらし
く、大赤斑前方のSEBは一段と幅広く見えています。大赤斑の南側では昨シーズ
ン同様、南温帯縞(STB)が淡く、南南温帯縞(SSTB)が濃い状態が続いています。
永続白斑BAはII=25°付近で健在ですが、赤みを帯びて薄暗く目立ちません。BA
後方には長さ数十度のSTBの濃化部が続いています。
北半球で目を引くのは、北赤道縞(NEB)の変化です。NEBは2009年の拡幅現象によ
り、幅広いベルトとなっていましたが、今シーズンは一転して細い、拡幅以前の
状態に戻ってしまいました。特にII=200°台ではかなり細く、以前はNEBの中央
近くに見えていたバージ(barge)が北縁の突起模様となり、NEB北部(NEBn)の白斑
は半分以上北熱帯(NTrZ)に露出してしまっています。他の経度でもベルトが北側
から淡化して、北縁が急速に後退しているようです。なお、II=50°付近では、
長命な白斑WSZが顕著です。前年の拡幅現象の影響が残る1997年に出現して以来、
14年間も存続しており、この緯度の模様としては極めて長命です。おそらく、北
半球の模様としては観測史上、最も長命ではないかと思われます。不思議なこと
に、WSZは同じ緯度にある他の模様よりも常に優勢で、暗い模様であるバージを
壊したり、他の小白斑との合体・吸収を繰り返して、大きく明るく成長してきま
した。現在では、NEBnにあるどの白斑よりも大きく顕著で、南側にあるBAよりも
大きく明るく見えます。
北温帯縞(NTB)は南組織(NTBs)が完全に淡化し、北組織(NTBn)だけが薄暗く残っ
ています。3月号にも書きましたが、NTBsを流れる木星面最速のジェットストリ
ームアウトブレーク現象(NTBs jetstream outbreak)が発生する可能性が高くな
っていますので、NTBs上にメタンブライトな白斑が発生していないか、十分に注
意する必要があります。
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