今シーズンは、北赤道縞(NEB)が著しく細くなって注目されています。細化はII=
120°付近にある巨大なバージ(barge)から、II=325°のWSZの間の区間で進んで
いましたが、12月半ば以降、残っていた区間でもベルトの北縁が淡化し、細化は
ついに全周に及んでしまいました。現在、NEBは幅が5°弱しかありません。この
結果、以前はベルトの北縁にあったバージは、完全にNEBから分離し、幅広くな
った北熱帯(NTrZ)に取り残されてしまっています。このような異常な状態は、過
去40年以上、観測されたことがありません。
北温帯縞(NTB)から北側の状況は、前回のレポートからほとんど変わっていませ
ん。II=300〜180°の区間では、NTB北組織(NTBn)が後方ほど北よりに傾いた条模
様として明瞭に見られ、北北温帯縞(NNTB)にも細長い暗部が2ヵ所あります。そ
れ以外の経度では、NTB、NNTBとも淡化して縞模様がほとんどなくなっています。
当観測期間は、大赤斑(GRS)後方の南赤道縞(SEB)の白雲活動(post-GRS
disturbance)が活発になり、注目されます。この領域では、元々白雲活動が続い
ていましたが、12月以降活動的になり、長さ40〜50°の右上がりに傾いた明部に
発達しました。内部には、大型の白斑がソラマメのように並んで、1980年代のこ
の領域を彷彿とさせる様相になっています。
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[図1] 大赤斑後方の活動域と全周で細化したNEB 左) 左端の大赤斑から白雲の活動域が伸びている。 撮像:クリストファー・ゴー氏(フィリピン、35cm) 右) 中央の巨大なバージ前方でもNEBが細化している。 撮像:畑中明利氏(三重県、40cm) |
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一方、大赤斑の前方に伸びるストリーク(dark streak)には、ほとんど変化が見
られません。一時、淡化の兆しがありましたが、その後ほとんど進展していませ
ん。薄暗いストリークがII=280°にある永続白斑BA付近まで伸びていますが、条
模様というよりは、南熱帯(STrZ)の北半分が灰色に暗化したように見えます。大
赤斑の南を囲むアーチは健在で、大赤斑後方にも青黒いすじが30°ほど伸びてい
ます。これもストリークの一部かもしれません。
大赤斑後方とは対照的に、前方のSEBは静かです。南組織(SEBs)が厚く濃く、南
縁も平坦で凹凸は見られないので、SEBsのジェットストリームは全く活動してい
ないようです。ベルト北部に伸びる薄暗いSEBZでは、II=90°付近に、比較的明
るい大型の白斑があり、暗いベルトの中で目立った模様になっています。
大赤斑前方で復活した南温帯縞(STB)は、暗部の前端がII=40°に達しています。
暗部はII=90°付近で前部と後部に分離しており、後部はやや南側に寄っていま
す。後端部はついに大赤斑の南から離れ、II=130°付近に移動してしまいました。
昨年の今頃の木星面は、南赤道縞攪乱(SEB Disturbance)が活動中でしたが、SEB
はまだかなりの経度で淡化状態にありましたし、NEBも幅が14〜15°もある太い
ベルトでした。それがわずか一年の間に、SEBは濃化復活し、NEBは太さが3分の1
になるという劇的な変化を遂げています。木星は激しい活動を続けている生きた
星であることを実感させられます。
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