火星はしし座の後ろ足付近に輝いていて、10時過ぎには東の空に昇ります。明る
さは0等級になり3月末には最接近を迎えます。Lsは60°を越え、北半球の夏至が
近づいています。視直径は12秒を超えたので、望遠鏡で見ると北極冠と共に、暗
い模様もよく見えるようになっています。
北極冠はだいぶ小さくなり、その周辺は目覚しく変化するようになって来ました。
画像は、およそ1ヵ月間の極冠の大きさの変化を示しています。これからどんど
ん北極冠は縮小していきますので、ここしばらくの間は、その様子を詳しく観測
できることでしょう。
当観測期間は、極冠周辺で面白い現象が捉えられています。北極冠のエッジは、
それより北側の地域よりも数段明るく見えます。この原因は、縮小過程にある北
極冠のエッジから白雲(霧のようなもの)が出るためで、縮小期の極冠独特の現
象です。この雲は、北極冠の上でできた東風によって流され、しばしば極冠上に
砂嵐を引き起こします。良い条件下の観測ではありませんが、2月10日のアメリ
カのシーン・ウォーカー(Sean Walker)氏の画像では、CM=170°付近の北極冠に
やや黄色っぽい部分が見られます。これは北極冠の上で起こった初期の砂嵐であ
る可能性があります。12日には、東風に流されて、CM=30°付近まで広がってい
る様子が報告されています。今回は、まだこれ一度だけですが、これから何度も
同じような現象が起こると思われます。
縮小を始めた北極冠には「割れ目」のようなものが現れますが、今回も1月16日
にアキダリウムの北方で捉えられています(図1のc)。この様子は眼視でも確認さ
れています。
火星の高地では、山岳雲が顕著になってきました。山岳雲は青画像で明瞭に検出
されます。視直径が大きくなり、火星像が大きくなるにつれて、カラー画像でも
これらの雲が記録されるようになりました。雲は火星の午後半球で現れ、明暗境
界(ターミネーター)に近づくにつれて明瞭になります。図1のbの左側のターミネ
ーターに見られる白雲はエリシウム山にかかる山岳雲で、図1のdの中央左に単独
で見える雲はオリンピア山、左端に見える一連の雲はタルシスの3山です。
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