6日の最接近の頃は、日本から目立つ模様の見えない時期でしたが、シーイング
の良いときには小さくなった北極冠や、それを取り巻く暗い模様が見られました。
1.氷晶雲
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[図1] 東西に広がる氷晶雲 |
下の青画像で明るく見られる。撮像:畑中昭利氏(三重県、40cm) |
火星面を見渡すと、東西の端や赤道から北半球の低緯度地方にかけて東西に伸び
る明るい白雲が目立ちます。これはこの時期特有の氷晶雲です。青画像で見ると、
この様子がよく分かりますし、眼視による観測でも、東西に白っぽいベールをか
ぶった様子を見ることができます。海外からの高解像度の画像を見ると、この氷
晶雲も単調なベールではなく、微妙な濃淡があり、地球の高層雲を彷彿とさせま
す。
この緯度にある顕著な模様は大シルチスですが、氷晶雲のために多くの場合、火
星面の東西ではベールに覆われたように淡く見え、中央付近で最も暗くなります。
この現象は他の模様でも見られ、アキダリウム(30W, +50)は、子午線付近までベ
ールに覆われたように見え、午前半球では眼視では形が分からないほど不明瞭で
す。
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[図2] 火星のスケッチ |
氷晶雲の影響でアキダリウムが淡く見える。観測:安達誠(滋賀県、30cm) |
2.山岳雲
北半球が夏至に近づく頃は、北極冠が急速に縮小するため氷晶雲とともに、山岳
雲が顕著になります。今年と同じ位置関係だった1999年の接近でも、眼視観測で
はっきりと山岳雲を捉えることができました。今シーズンも眼視での観測が数多
く報告されています。
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[図3] 午後半球の山岳雲 |
オリンピアとタルシス3山が白点として見られる。撮像:永長英夫氏(兵
庫県、30cm) |
山岳雲は午前半球では淡く(見えないこともあります)、午後になると山体を昇る
上昇気流によって発達します。オリンピア山やタルシスにある3つの火山、さら
にエリシウム山(215W, +23)も山岳雲を伴って見られています(図3)。画像で非常
に顕著ですが、これは今シーズン特に目立っているのではなく、画像処理の技術
によって、はっきり記録できるようになったものと考えられます。
3.北極冠
2月15日頃の北極冠は、中心からの角度で約40°の大きさでしたが、3月14日には
20°足らずまで急速に縮小しています。2月中、北極冠のエッジには構成物質で
あるドライアイスが急速に気化する際に発生すると思われる白雲が、白く輝くリ
ングとして見られましたが、3月14日には、エリシウムの北側で見られる白雲を
除けば、ほとんど目立たなくなりました。エリシウムの北の白雲は常にこの時期、
同じ場所に現れますので、地形と大きく関係していると考えられます。
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[図4] 北極冠の割れ目 |
撮像:Christopher Go氏(フィリピン、35cm) |
北極冠が縮小すると、毎回、極冠を取り巻くように非常に黒いバンドができます
が、その内側に永久北極冠が見えてきました。特に今シーズンは観測技術の発達
によって、北極冠の大きな割れ目が記録されています。先月号で、ダストストー
ムが北極冠を覆って黄色くなった部分ができていると報告しましたが、大きな割
れ目はちょうどその位置に見られます。巨大な割れ目が北極冠の特定の場所でき
ることと、同じ位置で砂嵐が起こることは、何か関係があると考えるのが妥当で
はないかと思われます(図4)。
4.暗い模様の変化
最接近前後の観測が集まり、詳しい状況がわかってきました。シヌスサバエウス
(340W, -8)とシルチスとの間が、いつもより淡いのが目立ちますが、大きな変化
は見られません。その他については次回に報告したいと思います。
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