3月末、南温帯縞(STB)の暗部が、ついに永続白斑BAに追いつきました。赤いBAの
後方には、STBが尻尾のように長く伸び、ここ10年来、お馴染みの姿が復活して
います(図1)。その後端は大赤斑(GRS)付近まで達していて、長さは70°に及びま
す。BAのすぐ後ろにあった小暗斑は消失し、白斑になってしまいました。逆に青
白い白斑はSTBと同化して、コブのように見えており、その後方にはもうひとつ
コブができています。BA本体は赤みが強く、特に影響は見られませんが、今後BA
の前進速度が増すことが予想されます。加速の幅は0.1°/dayとわずかですが、
過去3回の衝突では必ず起こっています。現在のSTBの暗部は長く立派ですが、い
ずれは前方へSTBnのジェットストリーム暗斑を、後方へはSTB南組織(STBs)を伝
わる暗斑群を放出しながら徐々に崩壊して行くことでしょう。そして、現在II=
330°にある薄暗い小さな暗部(図2中央)がいずれベルト化して、次の世代のSTB
に成長するはずです。
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[図1] BAと一体になったSTBの暗部 |
撮像:クリストファー・ゴー氏(フィリピン、35cm) |
南赤道縞(SEB)は南縁が暗斑群で凸凹しているのが目につきます。一見、SEB南縁
(SEBs)を高速で後退するジェットストリーム暗斑のようですが、動きを精査する
と後退速度は小さく、ほとんど動いていない暗斑もあります。昨年末からSEBsを
後退して大赤斑に衝突する暗斑が目につくようになりましたが、思ったほどジェ
ットストリームは活動的ではないようです。そのせいか、大赤斑後方のSEBの活
動域(post-GRS disturbance)も激しい活動は見られません。
大赤斑は相変わらず赤みが強く、明瞭な楕円暗斑として見られます。2月以降、
SEBsの暗斑が次々と衝突して大赤斑に取り込まれたのですが、ほとんど影響ない
のは意外な感じがします。経度はII=194°でゆっくりと後退を続けています。
II=200°を超えるのは時間の問題と思われます。長径は3月以降、14°台で安定
していて、小さめですが以前よりは少し持ち直しています。大赤斑は、近年著し
く縮小が進んで注目されていますが、SEBsの暗斑群との会合がしばしば見られた
2000年代前半は17°台で、ほとんど変化しませんでした。現在の大赤斑は、当時
と似たような状況にあるのかもしれません。
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[図3] 大赤斑付近 |
撮像:小澤徳仁郎氏(東京都、30cm) |
北赤道縞(NEB)北縁の淡化は、II=150〜200°で顕著ですが、その他の経度ではあ
まり進んでいません。しかし、NEBの北部は全周で濃淡が目立ち変化に富んでい
ます。2月にWSA+と衝突・合体して注目された北縁の白斑WSZは、II=330°に位置
しており、長径が11〜12°もある大きな白斑で輪郭も明瞭です(図2)。16年に及
ぶWSZの歴史の中で最大の規模に成長しています。昨年の秋頃と比べるとやや減
速しましたが、それでも-0.7°/dayという、この緯度としては異例のスピードで
前進しています。NEBの北部ではバージ(barge)と呼ばれる小暗斑が増えています
が、大きさも緯度もバラバラで変化が激しく、大きく安定なものはII=220°に見
られる横長のバージくらいです。バージや小白斑は、NEB北縁の後退期に特徴的
な模様なので、今後も数が増えると思われます。
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[図2] 大きく顕著になったWSZ |
撮像:永長英夫氏(兵庫県、30cm) |
北北温帯縞(NNTB)の南縁で2月以降観測されている、ジェットストリームに乗っ
て前進する暗斑群は、木星面の半周以上に広がっています(図2と図3)。これまで
に8〜9個が同定され、-2.6°/dayで前進を続けています。これによってNNTBが徐
々に濃化を始めているようです。今シーズンの北温帯縞(NTB)北縁は、のこぎり
状の突起模様に覆われていましたが、暗斑群の出現以降、ギザギザが消失しつつ
あります。
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