まず、大赤斑(GRS)と会合中の南赤道縞(SEB)のナゾの明部の状況です。全体の様相は先月
号の報告と変わっていませんが、9月下旬から観測されていたSEB内部から赤斑孔
(RS Hollow)への開口部が10月下旬に閉じてしまい、現在は、半円形をした赤斑湾(RS bay)
の輪郭が完全に復活しています。薄茶色をした明部の雲と、大赤斑後方の活動域(post-GRS
disturbance)の白雲は、RS bay後部から斜め前方に伸びる暗条で隔てられていましたが、
現在は暗条が消失して直に接しています。両者はお互い逆向きに動いてRS bayの下でぶつ
かっているはずですが、post-GRS disturbanceが大赤斑直後でやや活発になっている以外、
異常は見られません。
今も明瞭で赤みが鮮やかな大赤斑の周囲では、着実に暗部が発達しつつあります。以前見
られた大赤斑後端とSEBをつなぐ細いブリッジと前方の短いストリーク(streak)は、濃度
を増して、大赤斑南部を囲むアーチへと変化し始めていて、大赤斑前方の南熱帯(STrZ)も
やや薄暗くなっています。また、11月は後方から南温帯縞(STB)の薄暗い暗部が大赤斑を
通過し始めたので、何か影響があるか注目したいところです。
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[図1] SEBの明部と大赤斑の会合 |
RS Bayの開口部(▲)が10月26日頃に閉じてしまった。大赤斑周囲の暗部の発達にも注目。撮像:阿久津富夫氏(フィリピン、35cm)、永長英夫氏(兵庫県、30cm)、熊森照明氏(大阪府、28cm)、グレイ・ウォルカー氏(米国、25cm) |
大赤斑後方のSEBでは長さ40°のpost-GRS disturbanceが活動的で、乱れた白雲に満たさ
れています。後端にある白斑が最も大きく最も明るく見えます。その後方には、尻尾のよ
うに細長い明帯がII=320°付近まで伸びており、SEB北組織(SEBn)が非常に濃くなってい
ます。一方、大赤斑前方では、SEB南縁に沿って灰色のストリークが形成されて、ベルト
が太く見えます。ストリークはII=50°付近まで続いていて、内部にはジェットストリー
ム暗斑が多数含まれています。
II=15°に位置する永続白斑BAは、暗い縁取りで囲まれたリングになっていて、内部は赤
みのあり濁っています。後方には長さ約50°のSTBの暗部が続いています。前方でもSTB北
組織(STBn)が濃く見られますが、前方へ進むに従って暗斑群に分解しています。これらは
おそらくジェットストリーム暗斑で、大赤斑方向に前進していると思われます。
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[図2] 可視光とメタンで見る大赤斑周辺 |
SEB南縁の白点はエウロパ。メタン画像で見られる北半球の2個の白斑は、赤道よりがWSZ、極側がNNTZのメタン白斑 |
北半球に目を移すと、北赤道縞(NEB)は細くなり、北縁がかなり乱れて凸凹しています。
NEB北縁の後退期によく見られるバージや小白斑はほとんどありません。2009〜2010年の
ように、さらに細くなる可能性もありますが、当時は見られなかったベルト内部のリフト
活動が、小規模ながら散見されます。長命な白斑WSZは、メタンバンドでは極めて明るい
白斑ですが、可視光では北熱帯(NTrZ)中央の薄暗いパッチで、白斑とは認識できません。
NEB南縁から赤道帯(EZ)に向かって顕著なフェストゥーン(festoon)が多数伸びており、EZ
は北部がやや黄色みを帯びて薄暗くなっています。NEB南縁は濃い暗斑も時々出現し、活
動的になっています。
北温帯縞(NTB)の北はII=90〜260°の範囲で薄暗くなっています。しかし、以前見られた
NTB北組織(NTBn)が北へ垂れ下がる構造はなくなり、乱れた暗色模様も少なくなっていま
す。なお、II=130°のNTBnには白斑があり、明るい模様の乏しいこの領域で目立っていま
す。
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[図3] BAとその周辺 |
BAは内部が薄暗いリング白斑になっている。撮像:小澤徳仁郎氏(東京都、32cm) |
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