[WSZの赤化]
北熱帯(NTrZ)の長命な白斑WSZが、最近赤みを帯びてきたと、フィリピンのゴー氏
(Christpher Go)が指摘しています。今シーズンのWSZはメタンバンドの画像では大きく明
るいものの、可視光では灰色のしみのようで、白斑として見えない状態が続いていました。
11月後半以降に報告された画像を調べると、確かにいくつかの画像で、灰色のしみがわず
かながら赤みを帯びているのがわかります。図1は10月中旬と12月初めの青画像と赤外画
像を比較したものです。10月は青画像でも赤外画像でも同程度に明るく見えていますが、
12月の画像では青画像がやや薄暗くなっていて、WSZが赤みを帯びていることが明らかで
す。WSZは大赤斑や永続白斑BAと同じ高気圧的な渦で、1997年に誕生して以来、他の白斑
との合体を繰り返して大きく成長してきました。そのため、昨年5月号で他の大型の高気
圧的渦と同じように赤くなるのではないかという予想をしたのですが、早くも現実になっ
たようです。ただし、BAの例のように、眼視でも赤みが明瞭になるまでにはかなり紆余曲
折があると思われますので、長い目で変化を追いかけたいものです。
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[図1] WSZの赤化 |
10月と12月の青画像と赤外画像でWSZ(▲)を比較した。12月のWSZは青画像で薄暗く、赤外画像で明るく見えるので、赤みがあることがわかる。撮像:阿久津富夫氏(フィリピン、35cm) 撮像:阿久津富夫氏(フィリピン、35cm) |
[その他の状況]
南赤道縞(SEB)のナゾの明部と大赤斑の会合は、あまり進展が見られません。SEBから赤斑
孔(RS Hollow)への開口部は完全に閉じてしまいましたが、明部本体が少しずつ痩せて来
たようで、大赤斑後方のSEB活動域(post-GRS disturbance)の白雲が再び大赤斑前方に通
って見えるようになっています。
大赤斑は相変わらずオレンジ色が鮮やかですが、周囲を薄暗い模様で取り囲まれつつある
印象です。南部のアーチはやや弱まってブリッジ状に変化していますが、前方のSTrZにス
トリーク(dark streak)が伸びて薄暗くなっています。大赤斑の南側では、南温帯縞(STB)
の薄青い暗部が通過中ですが、特に異常はありません。そのさらに南には、南南温帯縞
(SSTB)の小白斑(AWO)4個が進んで来ています。これら4個のクラスターは、昨シーズン大
赤斑通過後に急接近して合体が警戒されたのですが、再び大赤斑通過に合わせて、中央の
2個(A0とA1)の間隔が狭まっています。
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[図2] 12月の大赤斑周辺 |
今シーズンの主要の現象は大赤斑周辺に集中している。顕著な大赤斑と周囲の暗化、SEBの明部、赤化したWSZ、SSTBのAWOの接近などが見られる。撮像:永長英夫氏(兵庫県、30cm) |
大赤斑前方のSEB南縁には灰色のストリークが形成されて、ベルトが幅広く見えています。
ストリークの内部にはジェットストリームに乗って後退する暗斑が多数含まれていて、大
赤斑周囲の暗部形成に深く関わっていると思われます。ベルトの北部は青灰色で、米粒の
ような小白斑が無数に見られます。このような見え方は、近年SEBが濃く活動的な時期の
典型的なパターンとなっています。
赤道帯(EZ)は、昨年前半に観測された北半球の大変動の影響が残っているらしく、北赤道
縞(NEB)南縁に沿って青黒い暗部が各所にあり、そこからEZに向かって明瞭なフェストゥ
ーン(festoon)が多数伸びています。このため、EZ北部はやや薄暗く感じられます。NEBは
全周で細くなり、部分的にかなり細くなっている経度もありますので、2009〜2010年のよ
うな異常に細いNEBが再現する可能性もあるのですが、当時と異なり、EZが活動的である
こと、NEB内部に小規模ながらリフト活動がいくつも見られることから、筆者は否定的な
見方に傾いています。
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