当観測期間の木星面は概ね安定しており、大きな変化はありませんでした。大赤斑(GRS)
は相変わらず鮮やかなオレンジ色をしています。経度はII=208°で、じわじわと後退を続
けています。大赤斑との会合が続く南赤道縞(SEB)内部の薄茶色をした明部は、大赤斑に
近い後半分が痩せて細くなり、2月中旬にはかなり目立たなくなってしまいました。一方、
前端側は明るくなって白斑の姿が甦ると共に、1月中頃以降は大赤斑からゆっくり遠ざか
りつつあります。そのため、全体としては会合以前の様相に近くなってきました。
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[図1] SEBの明部と大赤斑 |
SEB明部は中央部分が痩せて不明瞭になった。大赤斑前方にはSTB Ghostが薄暗く見えている。撮像:柚木健吉氏(大阪府、26cm) |
大赤斑後方に見られるSEBの活動領域(post-GRS disturbance)はすっかり衰えてしまい、
小ぶりな白斑が数個見られるのみで、高解像度の画像で見ても、白雲の乱れ方は小さくな
っています。この領域の活動は周期的な消長を繰り返すので、今回の変化もその一部と思
われます。その他の経度のSEBは、青黒い中央組織を挟んで南部が暗茶色で、北部は微細
な白斑を無数に含んで青みが強いという特徴があり、ちょうど10年前のSEBとよく似てい
ます。SEBが長期に渡って濃化している間には、mid-SEB outbreakと呼ばれる激しい白雲
活動が数ヶ月から数年おきに発生します。1990年代末から2000年代前半にも度々観測され
ました。2010年の南赤道縞攪乱(SEB Disturbance)によってSEBが濃化してから3年以上経
過しましたので、mid-SEB outbreakの発生に注意を払う時期に来ていると思われます。
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[図2] 永続白斑BA付近 |
BAがリング状に見られる。前方のSTBnは左側で暗斑群に分解している。撮像:永長英夫氏(兵庫県、30cm) |
永続白斑BAはII=326°にあり、暗い縁取りで囲まれ内部が薄暗いリングとして見られます。
後方には南温帯縞(STB)の暗部が続いていますが、長さは40°と、少しずつ短くなってい
ます。これはBAのところで暗部が崩壊し、STB北組織(STBn)のジェットストリーム暗斑と
して放出されているためと考えられます。ただし1月以降、暗部のさらに後方で、STB南組
織(STBs)に沿って細長い組織が新たに形成され始めているので、全体としてSTB暗部が伸
長するかもしれません。
細くなった北赤道縞(NEB)は、北縁が乱れてギザギザしており、内部には小規模なリフト
活動が散見されます。ベルト北縁には青黒い暗部とそこから赤道帯(EZ)に伸びるフェス
トゥーン(festoon)が多数見られます。EZは以前に比べて明るくなり、赤道紐(EB)は淡く
目立たなくなっています。
北熱帯(NTrZ)の長命な斑点であるWSZは、淡いピンク色で可視光では微かですが、メタン
バンドでは相変わらず明るく顕著です。WSZの北の北北温帯(NNTZ)には、昨シーズン、メ
タンブライトな赤色斑点として注目されたLRSが見られます。こちらもメタンバンドでは
明るい白斑ですが、可視光では赤みが薄れてしまいました。
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