火星の視直径は3月1日で12秒台となりました。Lsは100°を越え、北半球の夏至を少し過
ぎたところです。
北極冠はかなり小さくなり、規模の大きな寒気の噴き出しは見られなくなっています。し
かし、火星面の各地には山岳雲や、低位緯度地方の氷晶雲など、雲の活動が盛んに見られ
るようになりました。
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[図3] クリセ・クサンテ地方 |
中央を斜めに横切る白雲の帯が見える。撮像:ザビエル・デュポン氏(フランス、18cm) |
図3はクリセ(33W, +10)・クサンテ(52W, +13)が中央に位置していますが、このあたりは
この時期、毎回このような姿を示します。左端のターミネーターに重なるように見える雲
があるため、斜めのベルト状に見えました。低緯度地方には、雲の帯が広がっています。
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[図4] ヘラス盆地にかかる雲 |
北極冠よりも明るく大きく見える。撮像:ドナルド・パーカー氏(米国、40cm) |
ヘラス盆地には極冠と見まがうような大きく白い雲が広がって、大変目立っています
(図4)。画像では、すっかり小さくなった北極冠と、南(上)のヘラス盆地にできた大きな
白雲が記録されています。また、中央のシルチスに氷晶雲と思われる、白雲のベールが覆
っている姿が良くわかります。ターミネーターに見える白雲はエリシウム高原にかかる白
雲で、山岳雲のひとつです。
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[図5] タルシス地方の山岳雲 |
中央左の2個の白点が山岳雲。撮像:クリストフ・ペリエ氏(フランス、25cm) |
図5の中央右に斜めに並んだ2つの白雲はタルシスの成層火山にできた山岳雲です。南極地
方には雲のベールの広がっている様子が記録されています。これからは、南極地方の白雲
の活動にも注意をはらう必要があります。
2012年に火星の南半球で見られた高高度まで立ち上がった正体不明の雲はLsでいうと82〜
96°で起こっています。ヘラスの東にあるエリダニア付近がリムにあるときに多くが見つ
かっているたるため、注目したいものです。
当観測期間は、国内では好条件での観測がほとんどなく、海外からの観測に頼りましたが、
これからは春の良い気流での観測が望まれます。
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