大赤斑(GRS)前方の南赤道縞(SEB)に見られる明部は、大赤斑と同じくらいの長さがある四
角形または楕円形の領域です。今年1月以降、前進に転じて大赤斑から徐々に離れつつあ
りましたが、3月後半はII=170°付近で停滞し、4月に入ると再度後退する気配が見られま
す。4月半ばの画像では、大赤斑前方に伸びる明るい南赤道縞帯(SEBZ)と連結し始めてい
るように見えます。今回、再び大赤斑との会合が始まれば、今度こそ大赤斑に到達すると
思われますが、明部の行く手は赤斑湾(RS bay)とその後方のSEB活動域(post-GRS
disturbance)で完全に塞がれているので、どのような現象が見られるか、ちょっと予想が
つきません。以前と同じ速度で大赤斑に近づくとすれば、明部の本体が赤斑湾に到達する
のは、合明けまもない8月頃となりそうです。
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[図1] 大赤斑とSEBの明部 |
SEBの明部が四角形の領域として見られる。大赤斑南のSSTBを「ミッキーマウス白斑」が通過中。撮像:岩政隆一氏(神奈川県、35cm) |
2月からII=200°台の北温帯縞北組織(NTBn)に2個の目立つ暗斑が見られます。淡化した
NTBnの暗部の前後端が暗斑として残ったもので、1日当たり+0.5°で後退していましたが、
3月20日以降、後方の暗斑が急速に淡化し、24日を最後に消失してしまいました。消失し
た位置は、ちょうど北温帯攪乱(NTD-1)の前端付近にあたります。NTD-1はNTBnと北北温帯
縞南縁(NNTBs)のジェットストリームが結合した構造と考えられ、同様の現象である南熱
帯攪乱(STr. Disturbance)では、2007年にSEB南縁(SEBs)の後退暗斑が攪乱前端で次々に
Uターンする、循環気流(Circulating Current)という現象が観測されています。そのため、
消失したNTBnの暗斑が、NTD-1前端で反転してNNTBsを前進する暗斑に変化した可能性があ
ります。候補となるNNTBsの暗斑は2個ありますが、肝心のUターンを観測できなかったた
め、残念ながらよくわかりません。現在、NTBnのもうひとつの暗斑がNTD-1前端に向かっ
て後退を続けているので、こちらにも注目したいと思います。
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[図2] NTBnの暗斑の消失 |
白線はNTBnの暗斑の位置、斜線部はNTD-1のおよその位置を示す。 |
大赤斑はII=210°に位置します。相変わらず鮮やかなオレンジ色ですが、長径は13°台で、
昨シーズンよりも一層小さくなっています。大赤斑とII=300°にある永続白斑BAとの間に
は、STBnに多数の小暗斑が見られます。ジェットストリームに乗って高速で前進していま
すが、大赤斑通過時に壊されて、その一部は大赤斑周回しているようです。
南南温帯縞(SSTB)では、A3〜A5の3個の高気圧性白斑(AWO)が大赤斑の南側を通過中です。
A3とA4の間には低気圧性の白斑が挟まっていて、海外ではその外観から「ミッキーマウス」
と呼んでいるそうです。
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