火星のLsは8月上旬に180°となり、北半球の秋分を迎えました。反対に春分となる南半球
では、いよいよ南極冠が見えてくるはずですので、今月は南極冠のエッジが見え始めたか
どうかに注目しました。とはいえ、地球から見る火星は大きく北に傾いていますので、南
極冠が見えたとしても、リム上の細い線になってしまうため、難しい判断になります。
7月18日にそれらしき観測がありましたが、はっきりとしませんでした。残念ながら、今
回は南極冠を確認できたという報告はおあずけとなります。
一方、北極冠で大きな変化が起こりました。7月15日以降、北極冠が画像で確認できなく
なったのです(図2)。
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[図2] 7月最後の北極冠 |
画像の一番下の白い点が北極冠。近赤外による画像。撮像:小澤徳仁郎氏(東京都、35p) |
熊森照明氏や尾崎公一氏らは、7月15日にガンゲス(60W, +10)が、今シーズン初めて暗く
見えている様子を捉えました。青画像で暗く写っている部分は、晴れた領域にあたります
(図3)。この画像では、北極冠付近に白雲が発生しているのが見られますが、その後、北
極冠は見えなくなってしまいました。7月30日にモラレス氏(Efrain Morales Rivera)が、
グリーン画像でこの地域が黄色いダストに覆われている様子を捉えたことで、北極からア
キダリウムまでの広い領域が、淡いダストに覆われてしまったことがはっきりしました
(図4)。
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[図3] 暗くなったガンゲス |
右の画像で、中央やや上の暗い部分がガンゲス(左はLRGB画像で、右はブルー画像)。撮像:熊森照明氏(大阪府、28cm) |
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[図4] 北極周辺に広がるダスト |
アキダリウム上空にダストが広がり、北極冠は見えない。撮像:エフライン・モラレス氏(プエルトリコ、30cm) |
翌7月31日の永長氏の画像では、北極冠の存在がほんのりわかるようになっていて、ダス
トがようやく淡くなったことが確認できました。永久北極冠は黄色っぽく見えるといわれ
ますが、今回の現象がその所以でしょう。
夕方になると明るくなっていた大シルチスの西側にあるイシディスやエリシウム山などの
山岳雲は、すっかり様子が変わり、明るい姿が見られなくなりました。残念ながら8月に
入ってからは観測報告がなく、これより後の火星の様子は分かっていません。
これからの観測の最大の目標は、いつ南極冠が見えるかということになります。南極地方
に注意した観測に期待します。
図5は、熊森氏が作成した今シーズンの火星面展開図です。展開図は、なるべく火星面に
雲のない時の画像を選ばなければなりませんので、作るのが大変です。今シーズンの特徴
がよく出ています。
火星が西の空に低くなってきたため、観測報告は非常に少なくなって、残念な状況になり
つつあります。重要な現象もありますので、低くなっていても、ぜひ観測をお願いしたい
ところです。
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[図5] 火星面展開図 |
撮像・作成:熊森照明氏(大阪府、28cm) |
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