木星面は今月も大きな変化は見られませんでした。
大赤斑(GRS)は少し後退してII=228°にあり、オレンジ色が鮮やかです。
その他の領域も概ね穏やかな状況が続いていています。
先月号で書いた南赤道縞(SEB)北部の著しい明化領域は、木星面を周回して大赤斑付近に戻ってきました。
前後端は拡散して位置を特定できなくなりましたが、大赤斑周辺のSEB北縁はかなり淡く見えます。
その他の経度でも、SEBが細く見えることはないものの、ベルト北縁は概ね淡いようです。
大赤斑後方のSEB南部には定常的な活動領域(post-GRS disturbance)が40-50°に渡って続いていますが、乱れ方は小さく、明るい白斑も少ないようです。
北赤道縞(NEB)では拡幅現象が進行中です。
II=333°にある長命な白斑WSZの後方と、大赤斑前方のII=180°前後の領域で特に幅広くなっていて、中間の領域も前後から徐々に埋められてきているようです。
高解像度の画像で見ると、拡幅したベルトのさらに北側、北緯20.5°に沿って細い組織が形成されています。
最終的にこのラインが拡幅したNEBの北縁になると予想されます。
一方、大赤斑からWSZの間は、NEB北縁が淡くなって逆にベルトが細くなっているように見えます。
NEB拡幅のプロセスはなかなか複雑なようです。
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[図1] 拡幅したNEB |
白斑WSZ(▲)の後方でNEBが幅広くなっている。撮像:永長英夫氏(兵庫県、30cm) |
永続白斑BAはII=103°に前進しました。
暗い縁取りのある白斑でそれ自体に変化はありませんが、後方に伸びていた南温帯縞(STB)の断片はすっかり短縮して、BAよりもひと回り小さい暗斑となってしまいました。
以前は、その後方にもSTB南縁に沿って暗斑や暗部が続いていてかなり混沌としていましたが、現在ではほとんど消失し、BA後方は驚くほどすっきりとしてしまいました。
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[図2] BA周辺の変化 |
3月はBA後方に暗い模様が続いているが、5月はSTBの暗部が短縮した暗斑のみとなっている。▲の位置に新しい暗斑が見られる。撮像:上) 柚木健吉氏(大阪府、26cm)、下) クリストファー・ゴー氏(フィリピン、35cm) |
BAの約40°前方、II=65°にちょっと気になる暗斑があります。
昨年12月初めに、当時激しく活動していた大赤斑後端部の循環気流(Circulating Current)から派生した南熱帯(STrZ)のストリーク(dark streak)と、STB北組織(STBn)との相互作用から生成されたもので、しだいに目立つようになってきました。
BAや他のSTBの模様は南温帯流(S. Temperate Current)という帯流に乗って、体系IIに対して前進運動をしていますが、BAのドリフトはその中で最も遅いので、STBの模様に対する障壁となっています。
STBの暗部は暗斑として形成された後、発達しながらBAに追いつき衝突、その後、徐々に崩壊して短縮・消失というサイクルを繰り返しています。
ひとつの暗部の寿命は10年くらいのようです。
現在、BA後方で暗斑となってしまったSTBの暗部は2000年を基準とすると第4世代、II=280°にあるSTB Ghostと呼ばれる青いフィラメント状の暗部は第5世代に当たります。
今回、BA前方に出現した暗斑は第6世代のSTBになる可能性がありますので、今後注目して行きたいと思います。
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[図3] STBの活動サイクル |
STB暗部の形成から消失までを模式化した。暗部は数年おきに出現し、寿命は10年程度。このような活動が20年ほど続いている。 |
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