2015-16シーズンの最初の観測は、沖縄県の宮崎勲氏による9月8日の画像でした。日の出
わずか9分前、高度は6.9°という、厳しい条件での画像ですが、木星面の主要なベルトと
ソーンを確認することができます。宮崎氏はその後15日まで連日撮像を行っており、木星
面全周の状況を伝えてきてくれています。15日現在、他の観測者からの報告は、海外を含
めてありませんので、宮崎氏の観測は、合明けの木星面の状況を知ることのできる、大変
貴重なものといえます。
木星面全体としては、昨シーズン末からほとんど変化していないようです。南赤道縞
(SEB)と北赤道縞(NEB)がメジャーなベルトで、他に南南温帯縞(SSTB)が濃く太いベルトと
して見えており、その他のベルトやゾーンの配置や濃度もほぼ同じです。合の間に大きな
変化がなく、ひと安心といったところです。
大赤斑(GRS)は11日の画像で鮮明に確認できました。経度はII=232°で、昨シーズン末と
変わっていません。北部がやや淡いのか、少し扁平な印象を受けますが、赤みが強く、濃
度もかなりあります。周辺の南熱帯(STrZ)はすっきりと明るく、ストリークなどの暗色模
様は見られません。
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[図1] 顕著な大赤斑 |
大赤斑は赤みだけでなく、濃度もかなりある。周囲に暗色模様はない。撮像:宮崎勲氏(沖縄県、40cm) |
SEBは、細部はよくわからないものの、全体としては濃く幅広く、南縁には凹凸も見られ
ますので、昨シーズンと同じ状況と思われます。大赤斑後方の定常的な活動領域
(post-GRS disturbance)は、大赤斑近くに明るい明部が見られ、その後方もII=290°付近
までSEBがやや淡くなっているので、少し活動的になった可能性があります。
南温帯縞(STB)の青黒い三角形の領域であるSTB Ghostは、合の間に大赤斑の南を通過した
はずですが、今のところ確認できていません。大赤斑を通過する際に濃化するのではと期
待されましたが、淡いままのようです。永続白斑BAもII=60°付近にあると思われますが、
まだ確認できません。
赤道帯(EZ)は明るいゾーンで、NEB南縁に沿って見られる青黒い暗斑や長い暗部から、フェ
ストゥーン(festoon)と呼ばれる細いひげ上の模様がEZ中央に向かって伸びています。昨
シーズンとほぼ同じ様相です。
拡幅が進行中のNEBは、やや太くなったような印象を受けますが、悪条件化の画像で、ベ
ルトの縁が鮮明でないためかもしれません。後述する北熱帯(NTrZ)の白斑WSZの後方で幅
広く、大赤斑後方の経度でやや細いといったパターンは、昨シーズンと変わっていません。
NTrZは明るく暗色模様は見られませんので、北温帯縞南縁(NTBs)を流れるジェットストリ
ームのアウトブレーク(NTBs jetstream outbreak)はまだ起こっていません。次は2017年
頃と予想されていますが、北温帯縞(NTB)南組織が淡化して1年以上経ちますので、今後は
十分に警戒する必要があると思われます。長命なNTrZの白斑WSZはII=312°にあります。
周囲のNTrZよりも一段明るいのですが、コントラストはあまりないので、条件が悪いと厳
しいかもしれません。
NTB以北を見ると、大赤斑やWSZの北側の経度では淡いNTB北組織(NTBn)と濃い北北温帯縞
(NNTB)の二本のベルトを認めることができますが、II=0〜180°付近は暗く幅広いベルト
が一本だけ見られます。北温帯(NTZ)が暗化してNTBnからNNTBまでが融合した北温帯攪乱
(NTD)と呼ばれる暗部が昨シーズン観測されていましたので、この暗部が現在も残ってい
るようです。
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[図2] 経過中のカリストとエウロパの影 |
NTZの大きな黒点がカリスト本体。NEB南縁の黒点がエウロパの影。撮像:宮崎勲氏(沖縄県、40cm) |
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