日の出時の高度が高くなるにつれて、木星面の詳細がわかるようになってきました。先月
のレポートでも書いたように、現在の木星面はおおむね昨シーズン末の状況をそのまま維
持しています。
今シーズンも木星面で一番目につくのは、大赤斑(GRS)の鮮やかさです。オレンジ色が目
立つだけでなく、以前よりもひと回り大きくなったようで、長径は15°と2012年頃のサイ
ズに戻ったようです。経度はII=234°で、ゆっくりとした後退運動は変わっていません。
昨年の今頃は大赤斑の後端に大きな暗部が形成され、循環気流の活動によって大赤斑前方
の南熱帯(STrZ)にストリーク(dark streak)の出現が、4ヵ月に渡って繰り返し見られまし
た。現在は周囲のSTrZや南温帯縞(STB)に暗色模様は見られませんが、10月15日の永長氏
の画像を見ると、赤斑湾(RS bay)の後端に小さな突起が現れ、大赤斑後端と淡いブリッジ
で結ばれているように見えます。先シーズンと同じような活動が起こるかもしれませんの
で、注意したいものです。
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[図1] 大赤斑とWSZ |
大赤斑は以前より大きく見える。後方のSEBは活動弱い。▲の位置にWSZがある。撮像:永長英夫氏(兵庫県、30cm) |
永続白斑BAはII=45°にありますが、薄暗く周囲に暗い縁取りもないため不明瞭です。後
方には長さ30°のSTBの断片が伸びていて、その後方にはSTB南組織(STBs)の緯度に淡い暗
斑が2つ見られます。他のSTBは全周で淡く、条件が悪いとほとんど見えません。大赤斑前
方のII=200°にSTB Ghostと呼ばれる薄暗い暗部と、BA前方のII=0°に小暗斑(STB6)が見
られるのみで、STB北縁(STBn)を流れるジェットストリーム暗斑の活動もありません。
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[図2] 不明瞭なBAとSTBの小暗斑 |
STBの小暗斑(STB6)が濃く目立つ。右側のBAは不明瞭。この経度のNEBはかなり幅広い。撮像:宮崎勲氏(沖縄県、40cm) |
南南温帯縞(SSTB)は、木星面で3番目に濃く太い縞で、内部には高気圧性の小白斑(AWO)が
9個確認できます。昨シーズン観測された11個のうち、A7aとA7bが未確認です。これらの
白斑はA7とA8の間のII=240°付近にあると思われますが、この区間のSSTBは暗く白斑のよ
うな模様は認められません。2つの白斑は他のAWOと比べて小さく目立たなかったので、消
失してしまったのかもしれません。昨シーズンは、いくつかのAWOが集まって3つのグルー
プを形成していましたが、A6/A7のグループが減速したことで後続の白斑が接近し、現在
はA5除く8個のAWOが木星面の片半球に集まっていしまっています。そのため、A5とA6の間
は140°も開いています。
今シーズンの南赤道縞(SEB)は、ベルトの中央南側に細長い明帯が発達して、かなりの経
度で二条になっています。この明帯は南赤道縞帯(SEBZ)と呼ばれます。ベルト南縁は起伏
に富んでいてSEB南縁(SEBs)に沿って流れるジェットストリームが活動的であることが示
唆されます。また、大赤斑後方のSEBは淡く、白斑などの模様は昨シーズン同様、ほとん
ど見られません。
北半球では北赤道縞(NEB)の拡幅が進行中ですが、今月の画像を見ると幅広くなっている
のはII=340〜60°の範囲だけで、その他の経度はベルト北縁に起伏はあるものの太くはあ
りません。ベルトの拡幅は進展しておらず、むしろ後退しているような印象を受けます。
北熱帯(NTrZ)の長命な白斑WSZはII=300°にあります。NEBへの湾入は浅く、大部分が明る
いNTrZに露出した状態ですが、周囲よりも一段明るいので、容易に確認できます。今月の
NEB北縁では、II=145°にある大きな暗斑が目を引きます。NTrZに大きく突き出したベル
トの膨らみの中にあり、中央がやや明るいリング状をしています(NEBn d. oval)。周囲の
NEBよりも赤みが強いのが特徴です。この領域は今年3月に大きな突起が出現して、ベルト
の拡幅活動が始まった場所であり、シーズン末の7月には高速で前進する暗斑も観測され
ていますので、拡幅活動と何らかの関連があるのか、注意深く見守りたいと思います。
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[図3] 今シーズンの木星面 |
10月13〜15日の観測から作成。撮像・作成:永長英夫氏(兵庫県、30cm) |
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