3月の木星面は、大赤斑(GRS)後方の南赤道縞(SEB)に大きな白斑が出現して活動的になっ
ています。白斑は3月1日にII=297°のSEB中に発生、5日には大きな白斑に発達しました。
その後も最初の発生位置から新しい白斑が次々に出現し、大赤斑後方のSEBは60°に渡っ
て大きな白斑や暗い暗柱が並んで乱れてつつあります。
大赤斑の後方には、元々post-GRS disturbanceと呼ばれる定常的な白雲の活動域があり、
消長を繰り返しています。一方、大赤斑から離れた場所で突発的に起こる乱れた白雲活動
は、mid-SEB outbreakとして知られています。どちらも特定の発生源から白斑が現れて、
前方のSEBに乱れた白雲領域を作ります。今回の活動は大赤斑から60°しか離れていない
ので、どちらの現象とも解釈できます。今後の活動を見て判断する必要がありそうです。
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[図1] 活動的になった大赤斑後方のSEB |
北半球ではWSZが明るく目立つ。撮像:堀内直氏(京都府、30cm) |
昨年12月に形成されたSEB北部の明化領域は、木星面を一周して2月後半に大赤斑後方に戻
ってきました。しかし、大赤斑の前方に抜けることなく、急速に短縮して消失してしまっ
たようです。大赤斑前方ではSEB北部が広範囲に淡くなっていますが、この白雲は前述の
post-GRS disturbanceに由来していると思われます。
SEBの南縁には凹凸が多く見られます。多くはII=0°付近にありますが、大赤斑の前方に
も大きな突起(暗斑)があり、1日当たり+2°のスピードで後退しています。このペースだ
と4月初めには大赤斑前端に到達すると予想されます。現在の大赤斑は、SEBが濃化安定な
時期としては異例に顕著な状態が続いていますが、暗斑との会合によって何か変化が起こ
るか、注目したいところです。
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[図2] 大赤斑にせまるSEB南縁の暗斑 |
4月初めに大赤斑に到達する見込み。撮像:永長英夫氏(兵庫県、30cm) |
北赤道縞(NEB)はII=270〜45°の区間でベルトが幅広くなっていますが、前号で書いたよ
うに前端にある白斑WSZに遮られて拡幅は遅々として進んでいません。最近は、WSZの前方
に新しいベルト北縁となる淡いストリーク(dark streak)がII=200°付近まで伸びていま
すので、拡幅がWSZを越えるかどうか、見守りたいと思います。なお、WSZは大変明るく顕
著になっているのが注目されます。明るい北熱帯(NTrZ)よりもさらに明るく、この経度で
は南半球の大赤斑と並んで際立った模様になっています。
[木星とガニメデによる恒星の掩蔽]
4月12日にHIP54057というしし座の7.3等星が木星によって掩蔽されます。潜入は14時45分
(UT)(日本時間23時45分)で、HIP54057が木星の左側から近づいて南熱帯(STrZ)付近に隠れ
るのが、アジアとオーストラリアの広い範囲で見られます。また、翌13日には同じ星をガ
ニメデが掩蔽します。潜入は11時57分(UT)(日本時間20時57分)ころ、継続時間は4.7分で
す。ガニメデは木星より小さいので、こちらは日本周辺の東アジアでしか見ることができ
ません。どちらも大変珍しい現象なので、狙ってみてはいかがでしょうか。
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[図3] ガリレオ衛星のダブル経過 |
イオとエウロパが同時に木星面を経過しながら、それぞれが自分の影を掩蔽している。大変珍しい現象。撮像:クリストフ・ペリエ氏(フランス、25cm) |
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