南赤道縞(SEB)では、3月に始まった白雲活動によって大赤斑(GRS)後方が大きく乱れてい
ます。3月10日頃までに出現した白斑によって大きな活動域が形成された後、しばらく白
斑の供給がストップしていましたが、25日になって少し後方のII=310°付近に新しい白斑
が出現し、活動域の長さは70°に広がっています。その後も新しい白斑が供給されて、非
常に活発な状態が続いています。活動はしばらくの間、続くと思われます。
SEBで起こる白雲活動には、大赤斑後方で定常的に見られる白雲領域(post-GRS
disturbance)と、大赤斑とは関係なく独立に起こるmid-SEB outbreakと呼ばれる2つのタ
イプがあります。今回の活動は、どちらの特徴も見られるので、どちらに分類するか判断
が難しく、しばらくは事態を静観するしかないようです。
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[図1] 大赤斑後方の白雲活動 |
図の右側で新しい白斑が発生し、大赤斑方向に移動しながら乱れた白雲に変化する様子がわかる。 |
ベルトが北に広がる拡幅現象が進行中の北赤道縞(NEB)は、動きの遅い白斑WSZが拡幅領域
の前端に居座っているため、前方に広がることができないという異常な展開が続いていま
す。それでもWSZ前方には北緯21°に沿って淡いラインが伸びて、NEBとの間が薄茶色にな
っています。同じように見えるところがII=90°付近にもあり、何かをきっかけとして拡
幅が一気に広がる可能性は残っているようです。
その一方で、拡幅領域では後端部分が40°に渡って淡化し、拡幅前の通常のNEBの幅に戻
ってしまうという大きな変化が起こっています。。現在の拡幅領域後端はII=5°付近に移
り、長さは100°ほどに短縮してしまいました。残った拡幅領域でも、ベルト北部が以前
よりも明るく見えるようになっています。今回の拡幅現象は全周に波及しないまま中途半
端に終わってしまうのでしょうか。今後の予想がつかない展開となっています。
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[図2] 永続白斑BAと淡化する拡幅後端部 |
NEB北部が中央左で淡く、ベルトが細くなっている。撮像:熊森照明氏(大阪府、35cm) |
SEB南縁には数多くの暗斑や突起が見られます。体系IIに対して後退していますが動きは
ゆっくりで、SEB南縁を高速で流れる後退ジェットストリームには乗っていません。現在、
大赤斑前方に大きなリング暗斑があります。当初はSEB南縁の小暗斑でしたが、しだいに
大きく成長して南熱帯(STrZ)に飛び出して見えるようになりました。2月は1日当たり+2°
の割合で後退していましたが、大赤斑に近づくにつれて減速し、現在は1日当たり+0.5°
です。大きくなったことでジェットストリームの奔流から離れてしまったためと思われま
す。3月下旬には大赤斑に到達して、面白い現象が見られるかと期待していましたが、し
ばらくおあずけのようです。
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[図3] SEB南縁のリング暗斑 |
画像中央でSEBから大きく突き出しているがリング暗斑。下はドリフトチャート。大赤斑の手前で大きく減速した。 |
大赤斑は相変わらず赤みが強く、大変目立つ存在です。2月はII=240°でほとんど動きま
せんでしたが、3月は大きく後退して、現在はII=245°に位置します。衝をはさんで周辺
減光が東西で入れ替わることで生じる位相効果(衝後は経度を大きく見積りがちになる)と、
大赤斑固有の90日周期の振動運動が重なったためと思われます。
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