最接近を迎えた火星は、さそり座の頭で-2等級の明るさに輝き、南天でひときわ目立って
輝いています。最接近時は、観望会の時間に目立つ大きな暗色模様が見えるという恵まれ
た状況で、たくさんの人が観望されたようです。視直径は18.6秒になり、木星の半分くら
いの大きさになりました。Lsは160°になり北半球は秋分に近くなってきています。一方、
南半球は春分に近づきつつあり、南極冠の形成時期になっています。
南極にはフード状の白雲が一面に広がりました(図1)。その下には雪雲と思われる、濃い
雲の帯が多くの観測者によって撮影されました。また、この様子は眼視でも見ることがで
き、Hellasの南方などにしばしば観測され次第にその範囲は広がっています。火星はこれ
までは雲に注目した観測が中心となり、低緯度地方の氷晶雲や山にできる山岳雲など、特
徴的な雲がたくさん見られました。
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[図1] 複雑な様子を示す南極フード |
撮像:熊森照明氏(大阪府、35cm) |
Syrtis Majorが日没となるころは、比較的小さいけれど非常に明るい雲がよく見られまし
た。変化が激しく数十分の間にどんどん姿が変わり、興味深い姿が見られました。また、
この雲は毎日ほぼ同じような姿と変化をしており、地形と大きく関係しているように見え
ました。この様子はHSTの画像でも公開されています。
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[図2] 南極地方の雪雲>/th> |
火星像の南の縁にできた白いベルトが雪雲の端。撮像:ミリカ−ニコラス氏(オーストラリア、35cm) |
大気中の水蒸気量の下降とともに、氷晶雲は次第に薄れてきています。今シーズンの観測
では、継続的な追跡は困難でした。しかし、報告の中には氷晶雲の精細な様子を記録した
ものもあり、貴重なデータとなりました(図3)。
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[図3] 火星面に広がる氷晶雲 |
表面を東西に覆う白いベルトが氷晶雲の一部。撮像:大田聡氏(沖縄県、30cm) |
5月の初めは、Tharsis付近の山やOlympus Monsの山岳雲は北西方向に吹き流されることは
なくなり、雲は山の上に同心円状に広がり、この付近の風がほとんどなくなってきたこと
を示していました。山岳雲も出方が鈍り、日没近い時間になるまで雲の見られない状態に
なっています。一方、火星のディスク周辺部には霧のような雲がたくさん見られるように
なっています。
最接近までは雲のシーズンでしたが、Lsが大きくなっていくこれからの火星観測はダスト
ストームに注意しなければならないときに移っていきます。
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