7月8日にLsは182°となり、北半球の秋分とほぼ重なります。反対に、南半球は春分とな
ります。この時期、火星はダストストームのシーズンを迎えています。
最初のダストストームの報告は、6月14日ブラジルのソアレス氏(Avani Soares)によって
もたらされました。画像から確認された位置は、Margaritifer SinusとAurorae Sinusの
中間(南より)で観測時刻は00時02分でした。ターミネーターぎりぎりにやや膨らんだよう
な写り方で、2012年に発生したhigh-altitude "plume"と同じような形態に見えました。
それから2時間後と4時間後にも観測されていますが、目立った姿は記録されませんでした。
ところが、翌日(15日)にプエルトリコのモラレス・リベラ氏(Efrain Morales Rivera)が、
Margaritifer Sinusに明瞭なダストストームを報告してきました。さらにその1時間半後
の03時36分にはアメリカのハンソン氏(D.J. Hanson)が詳細な姿を記録しました(図1)。こ
のダストストームは根棒状や馬蹄形ではなく、光斑がいくつも並んだような奇妙な姿をし
ていました。また、16日や17日の報告を見るとほとんど移動することなく衰退したようで
す。今回のダストストームは今まで知られてきたようなダストストームではなく
high-altitude "plume"と関連があるかもしれません。残念なことに、日本からは観測で
きない経度でした。
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[図1] 斑点状のダストストーム |
中央右上にできた光斑点群が見られる。撮像:DJ・ハンソン氏(米国、35cm) |
一方、6月15日にフィリピンのゴー氏(Christopher Go)がMare Sirenumの南に南極を取り
巻く気流に乗ったダストストームを観測しました(図2)。この後、この付近は黄色いダス
トのベールに覆われた姿が記録されています。日本からは大杉忠夫氏、小澤徳仁郎氏の画
像で確認されました。また筆者も眼視でやや明るくなっている様子を確認しています。
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[図2] 南極地方のダストストーム |
矢印の先がダストストーム 南極雲が切れている。撮像:クリストファー・ゴー氏(フィリピン、35cm) |
6月27日には今度は北極冠の周りを回る気流に乗って広がったダストストームを南アフリ
カのフォスター氏(Clyde Foster)が観測しました。その日から7月1日まで、ダストストー
ムが北極を回るように東に広がっていく様子が記録されています。このように、小規模な
ダストストームが頻発しています。これからは、規模の大きなダストストームの発生があ
るかもしれません。いよいよ目の離せない季節になってきました。
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[図3] 北半球にできたすじ状の雲 |
撮像:クライド・フォスター氏(南アフリカ、35cm) |
さて、それ以外の特徴的な現象として、北極周辺の白雲の活動が活発なってきています。
眼視ではぼんやりした白雲のベール状ですが、画像では非常に複雑で、時々、円形に晴れ
間ができたり、長い白雲のバンドができたりと、著しく変化している様子がわかります
(図3)。南半球ではさらに、Mare Erythraeum付近などに晴れて模様が黒々と見える領域が
できました。昔は「太陽湖」と呼ばれたSolis Lacusはこの晴れ間に入ると巨大な大暗斑
に見えますが、Mare Erythraeumとの境目がわかりにくく、一見すると暗斑のように見え
ないときもあります。火星面を覆う雲のベールによるいたずらといったところでしょう。
これからは、ダストストームや南極冠の出現に注目していきたいところです。
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