木星と土星はやぎ座を逆行中です。 日没とともに東西に並ぶように昇ってきますが、木星の方が赤緯が高いので、南中を過ぎると縦の配置に変わり、土星はあっという間に没してしまいます。
ここでは10月初めまでの惑星面についてまとめます。 この記事中では、日時は世界時(UT)、画像は南を上にしています。
9月13日、小天体の衝突によると考えられる木星面の閃光現象が2年ぶりに観測されました。 ブラジルのホセ・ルイス・ペレイラ(Jose Luis Pereira)氏ら、9名の観測者によって捉えられ、時刻は23時39分30秒(UT)、発生場所はI=106.4°、II=84.0°の赤道帯(EZ)南部でした。 公開されている画像や動画で見ると、閃光はかなり明るく、木星のリムで明るく見えるガリレオ衛星よりも明るい印象を受けます。 規模の大きな衝突では、木星面に暗い模様(衝突痕)ができることがありますが、残念ながら、今回は衝突痕は形成されず、翌日のメタンバンド画像でも異常はありませんでした。
淡化中の北赤道縞(NEB)では、II=240°付近で小さく丸いバージ(A)と、さらに小さな極小バージ(B)が合体する現象が見られました。 8月から接近を続けていた両バージは、9月20日頃には6°まで近づき、24日から26日にかけて、前方にあるバージBがバージAの北側をすり抜けながら壊れて合体してしまったようです。 この結果、バージはひとつ減って全周で8個となりました。
8月に大赤斑(GRS)前方の南温帯縞(STB)で発生した攪乱活動(STB outbreak)は、小規模な活動にとどまっています。 微小な暗斑が東西に放出されているようですが、核となる模様がなく、数個の青い暗斑と後方に伸びる長い尾が見られるだけです。 この領域の前方では、活動の初期に放出された6〜8個の小暗斑がジェットストリームに乗ってII=220°付近を前進中です。
大赤斑前方の南赤道縞(SEB)南縁には、相変わらずリング暗斑が並んでいますが、後方は静かでリング暗斑や突起はほとんど見られません。 SEBの南組織自体も淡くなっています。 この非活動な領域はII=110°に位置する永続白斑BAの北側まで続いています。 この後方では再び南縁に起伏が見られ、幅広い南組織に北縁に沿って赤茶色の細い組織が目立っています。
北半球では北温帯縞(NTB)が直線的なベルトとして見えています。 春先はとても濃く、北縁の鋸歯状の突起が目立っていたのですが、ゆっくりと淡化が進み、夏頃になると、大赤斑後方の経度で、4個の暗斑が目立つようになりました。 北縁から突き出た小暗斑で、3つ目だけが東西に長いバージです。 このうち前方の3個は9月中頃から急速に接近し、II=30°付近でひとつの細長いバージにまとまりつつあります。
北北温帯縞(NNTB)の南縁の暗斑群は活発な状態が続いています。 特にII=0°前後ではおびただしい数の暗斑が見られます。 ジェットストリームに乗って前進する暗斑群の先頭は、II=200°付近に達していて、6月末の活動開始から3ヵ月で、木星面をほぼ一周してしまいました。
[図1] 小天体の衝突による閃光現象 |
EZ南部に見える白点が、小天体の衝突と考えられる閃光。左リムの黒点はエウロパの影。撮像:ホセ・ルイス・ペレイラ氏(ブラジル、28cm) |
[図2] バージの合体 |
NEBでAとBの2つのバージが接近、すれ違うようにBがAの北側を通過しながら消失した。Aに取り込まれてしまったと思われる。 |
10月号の特集記事で、土星の北極周辺の色調変化について紹介しました。 昨年から今年にかけて、ヘキサゴンの内側が暗緑色から暗赤色に、外側が赤〜オレンジ色から青緑系に、さらに外側の北緯61〜69°の領域は緑系から明るい黄色へと、真逆のような色に変わってしまいました。
9月の画像を見ると、このうち一番外側の北緯61〜69°の領域の色がさらに変わり、オレンジ〜赤になっています。 過去の画像を調べてみると、極地方の色調変化は北極地方で1回(2014年)、南極地方で1回(2006〜2007年)観測されています。 どちらのケースも、明るい色調から暗い赤へと変化しているので、今回も同じような経過をたどるのではないかと思われます。
[図4] 10月の土星 |
矢印で示したところが、赤みが強くなっているゾーン。撮像:伊藤了史氏(愛知県、30cm) |
前号へ | INDEXへ | 次号へ |