火星は12月8日におうし座で衝となりました。 最接近を過ぎましたが、観測の好機にあります。 天頂近くまで昇るので、冬の悪気流の影響は最小限ですみます。 日没後の南天では12月22日にうお座で東矩となった木星が輝いています。 土星は南西天低くなり、観測は難しくなってしまいました。
ここでは1月初めまでの惑星面についてまとめます。 この記事中では、日時は世界時(UT)、画像は南を上にしています。
火星は12月1日に最接近となりました。 これまでかなりダスティーだった火星面ですが、しだいに収まって模様がよく見えるようになってきました。
12月はローカルダストストームが2回発生しました。 いずれも北極域からの冷気によるもので、赤道方向に向かって広がり、拡散して見えなくなりました。 このひと月ほど、北極は青白く明るい白雲(北極フード)と、黄色っぽい白の北極冠が見えるようになっていたので、極域ではダストを含んだ風が吹いていることがうかがわれていました。
12月23日、愛知県の伊藤了史氏によってUtopia(260W, +45)の南にアーチ状に広がったダストストームが捉えられました(図1)。 その後は観測が少なく、はっきりしたことはわかりませんが、早い時期に拡散してしまったようです。 前日の12月22日の画像を調べると、Utopiaの北の北極フードが黄色くなっていて、どうもそれが発生時の姿だったようです。
次いで12月27日に、同じUtopiaの南に、新たなダストストームが発生しました。 3枚の観測者によって記録されていて、最も早かったのは岡山県の鶴海敏久氏でした。 発生時は23日のものとほぼ同じ形状でしたが、2日後にはほぼ赤道付近まで、濃いダストベールとして移動した姿が記録されました。
12月の火星のLs(火星黄経)は350°から0°で、火星北半球の春分に差し掛かっています。 この時期の火星面では東西方向の雲の帯が見られます(図2)。 Lsがこの値になると現れる、季節的な現象です。 まるで金星のようですが、青画像だけでなく可視光でもかすかに見ることができ、筆者は眼視で捉えています。 カラー画像では赤い火星像の上に薄く青白い雲のバンドが何本も重なって写っていて見事でした。 バンドとバンドの隙間の暗い帯が緯度に平行に伸びていることもありました。
図2では火星像の左端に雲が集まっています。 これはTharsis台地にできた、高地にできる雲です。 これからは山岳雲が目立つ時期に入ります。
[図1] Utopiaのダストストーム |
矢印の先のアーチ状に明るいところがダストストーム。撮像:伊藤了史氏(愛知県、30cm) |
[図2] 東西方向に伸びる雲 |
青画像。火星像の上部に東西に伸びる雲が見える。左側の不規則な明暗はTharsis台地の雲。撮像:クリストフ・ペリエ氏(フランス、30cm) |
準循環気流の消失からふた月近く経過し、全周を取り巻く南熱帯紐(STrB)は少しずつ淡くなっています。 大赤斑(GRS)からII=205°にある永続白斑BA付近までの半周ではまだ濃く見えていますが、残りの半周は淡く、特にBA後方の南温帯縞(STB)の暗部に沿った区間では消失しかけています。 これに伴って大赤斑後方では、STBnのジェットストリーム暗斑群が再び見えるようになりました。
大赤斑はII=30°に後退しました。 相変わらずオレンジ色で明瞭です。 12月末に南赤道縞(SEB)南縁を後退してきた大きなリング暗斑が赤斑湾(RS bay)に進入し、大赤斑の後部で赤いフレークを発生させ、メタン画像でも大赤斑後方に伸びる尻尾のような明条として捉えられました。 これによって1月6日以降、大赤斑前方の南熱帯(STrZ)には大きな暗斑が出現しています。 現在、もうひとつのリング暗斑が大赤斑と会合中です。 フレークの発生やその後の影響が注目されます。
先月号で大赤斑の南を通過中だったSTBの小白斑についてふれました。 現在、白斑は大赤斑の30°ほど前方へ進んでいますが、今のところoutbreakは発生していません。
大赤斑後方のSEBには、post-GRS disturbanceと呼ばれる白雲活動領域があります。 ここ数年は概ね静かでしたが、今シーズンは活発で、現在も40〜50°に渡って乱れた白斑や暗柱が見られます。 この領域の活動はSEB南縁の後退暗斑群の供給源になっているだけでなく、SEB全体の消長にかかわっていると思われます。
BA前方のSTBでは、低気圧的な白斑であるWS6に変化が起きています。 12月半ばにWS6が急加速して、前方のSTBの暗部であるDS7の後端に追いついて圧迫、それと共に内部に青いフィラメント模様が現れて不明瞭になりました。 1月に入るとWS6は経度方向に伸長して、長さ20°のフィラメント領域(FFR)に変化しました。 この先、DS7と一体となってSTBの一部になるかどうか注目しましょう。
[図3] 大赤斑後方に生じたフレーク |
大赤斑後端からSEBに向かって伸びる暗条がフレーク。カラー画像では赤く、メタン画像では明るく写っている。SEB上をイオとその影が経過中。撮像:クライド・フォスター氏(ナミビア、35cm) |
[図4] フィラメント領域になったWS6 |
▼で示したのがWS6。昨年は明るい白斑だったが、内部に青いフィラメント模様が現れ、東西方向に伸長して、細長いフィラメント領域(FFR)に変化した。 |
土星は2月17日の合に向かって高度を下げています。 今のところ12月23日のクリストファー・ゴー氏(フィリピン)の画像が最後の報告で、衛星イアペタスの土星面経過が捉えられています。 今後はさらに条件が悪くなるので、これが今シーズン最後となるかもしれません。
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