天文ガイド 惑星の近況 2024年8月号 (No.293)

堀川邦昭、安達誠


夜明け前の東天では、土星と火星が相次いで昇ってきます。 みずがめ座の土星は日の出時の高度がほぼ40°に達し、うお座の火星もようやく30°近くまで昇るようになりました。 一方、木星は5月19日に合となり、観測はお休みです。

ここでは5月下旬までの惑星面についてまとめます。 この記事中では、日時は世界時(UT)、画像は南を上にしています。

火星

火星の高度はようやく20°を越え、視直径もほぼ5秒となり、少し観測しやすくなりました。 Lsは5月20日の時点で259°となり、南半球の夏至が近づいています。

南極冠は小さくなってきましたが、シーイングが良いとまだはっきり見ることができます。 今後さらに小さく見えにくくなると、火星の向きが分かりにくくなります。 火星が同じ向きになるように、今のうちにカメラの装着方向を決めておくといいでしょう。 Hellasの南にあるミッチェル山は、結局明瞭に捉えられることはありませんでした。 暗色模様ではMare Tyrrehenum(W220〜275, 0〜-40)の南側が淡く、前シーズンとは様子が異なっています。

南極冠が縮小すると、火星像の周縁に雲が現れるようになります。 南半球の明け方のリム付近に、いつ見えてくるか注意が必要です。

カラー画像は模様があまり出なくても、色でダストや雲が記録できます。 また、赤(R)、緑(G)、青(B)といった単波長も白雲の発生を捉えるのに有効です。 視直径が小さく困難だと思いますが、ぜひトライしていただきたいものです。 なお、赤外(IR)画像は表面模様を記録するのには向いていますが、火星を覆うダストや雲は捉えにくいという欠点があります。 低高度で撮像条件が厳しいため、コントラストの上がる赤外画像の報告が目立ちますが、雲やダストには不向きです。

撮像観測の場合、日の出後もしばらくの間は観測を続けることができます。 画像処理にコツがいるようですが、地平高度が上がってからの観測も有効と思われます。

[図1] 今月の火星面
左) 赤外画像。中央右の暗斑はSolis Lacus。撮像:眞島清人氏(沖縄県、30cm反射) 右) 右側にSyrtis MajorとHellasが見える。Hellasは眼視では見えにくいが、画像だとよく写る。撮像:クライド・フォスター氏(ナミビア、35cm)

土星

土星の環の傾きは2.5°となり、とても細くなってしまいました。 画像では両端近くにカシニの空隙が暗い節のように見えるだけです。 この時期、太陽との傾きはまだ5°もあるので、環の南側に影が大きく見えています。

土星本体を見ると、環をはさんだ両半球の色調が大きく異なっているのが目を引きます。 北半球は薄茶色で明るいのに対して、数年前まで環で隠れていた南半球は緑系の色調で、少し薄暗くどんよりとした印象です。 縞模様では北赤道縞(NEB)が赤茶色で、濃く幅広く見えます。 環の反対側にある南赤道縞(SEB)は、南部は緑色で濃く、北部は赤みを帯びているようです。 高解像度の画像では、両赤道縞の外側にも淡く細い縞が幾重にも取り巻いていますが、どのベルトに対応するのか、判断できません。

[図2] 今月の土星
環はさらに細くなり、南側の本体に影が落ちている。本体には淡く細い縞が多く見られる。撮像:クライド・フォスター氏(ナミビア、35cm)
[図3] 2023-24シーズンの木星面
2023年7月から2024年2月までの木星画像を日付順に並べた。大赤斑周囲の変化と、北赤道縞(NEB)の活動に注目。撮像:井上修氏(大阪府、28cm)、鈴木邦彦氏(神奈川県、19cm)、風本明氏(沖縄県、50cm)、伊藤了史氏(愛知県、30cm)、宮原正育氏(北海道、28cm)、佐々木一男氏(宮城県、40cm)、宮崎勲氏(沖縄県、40cm)、森田光治氏(滋賀県、32cm)

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