天文ガイド 惑星の近況 2025年6月号 (No.303)

堀川邦昭、安達誠


宵の明星として輝いていた金星が3月20日に内合となり、日没後の空にはおうし座の木星とふたご座の火星が南天高く見られます。 土星は3月12日に合となりました。 23日には環の平面が地球を通過する環の消失が起きましたが、まだ観測は不可能です。

ここでは3月下旬までの惑星面についてまとめます。 この記事中では、日時は世界時(UT)、画像は南を上にしています。

火星

火星では極冠が縮小し、あちこちに白雲が捉えられています。 白雲の発生場所は、両極付近、火星のリム(縁)近く(夕方が顕著)、特定の地域の3パターンがあります。

北極付近の白雲は北極冠上空を覆っています。 このため、北極冠は実際よりも大きく見えています。 今年は3月末になっても、まだこの雲の影響を受けています。

リム周辺では、火星の成層火山に白雲がかかるようになりました。 2月8日頃までは、白い斑点状の雲でしたが、その後は火山の山頂付近が雲から顔を出し、赤黒い斑点として記録されています。

また、Ls=30°を過ぎた今の時期には、低緯度地方に淡い白雲が、幅広い帯のように見えています。 ほぼ全周に渡っていますが、眼視ではかすかで、帯状にはなかなか見えません。

火星は4月15日に遠日点を通過します。 遠日点付近での面白い現象として「高高度の雲」があります。 発生のメカニズムはわかっていませんが、ありえない高さに雲ができ、主に明け方の火星の縁が膨らんで見えます。 今シーズンは2月21日にイタリアのミラベラ氏(Vincenzo Mirabella)によって、Meridiani(0W, -5)の位置に記録されました(図1)。 前日の20日にもかすかに写っている画像が報告されています。

これらの雲はかなり淡く、少し長めの露出が必要です。 火星の同じような場所に現れる傾向があります。 夕方の雲は夜間も残り続け、明け方のターミネーターの外側に白い雲として記録されることもあります。 観測の時は注意してください。

[図1] 火星の高高度の雲
矢印で示した位置に火星の縁から飛び出た雲が見える。右は緑画像を分かりやすく処理したもの。作惑星研究会のHPでは12枚の画像から作成した動画を公開している。撮像:ヴィンチェンツォ・ミラベラ氏(イタリア、41cm)

木星

観測シーズンは終盤となりましたが、木星面では激しい活動が続いています。 NTBs jetstream outbreakの活動を先導する2つの先行白斑は、LS#3が2月末、LS#2は3月初めに相次いで消失しました。 先行白斑の後方に形成された北温帯縞(NTB)の暗部はすべてつながって、全周で一本のベルトとして復活しました。

outbreakの影響を最も大きく受けているのが隣の北赤道縞(NEB)です。 平坦だったNEB北縁は鋸歯状になり、各所で白雲が入り込んでいます。 NEBは少し細くなり、ベルト北部に埋もれていた白斑は、北熱帯(NTrZ)に口を開いています。

mid-SEB outbreakはII=140〜260°の範囲で活動を続けています。 内部は小白斑や暗柱が各所で見られますが、明瞭なものは少なくなりました。 領域全体が1日あたり-1〜-2°の割合で前進していて、先端は大赤斑(GRS)後方の白雲領域に近づきつつあります。

赤道帯南部(EZs)の攪乱領域(SED)は、本陣となるEZsの白斑が体系I=190°付近にありますが、活動的ではありません。 しかし、南赤道縞(SEB)北縁の突起や長く伸びたフェストゥーン(festoon)は数多く、メタンバンドの画像で見るとEZsは全周でまだかなり乱れています。 SEDの活動はしばらく尾を引きそうです。

大赤斑はII=71°に後退しました。 長径は11.2°で史上最低を更新中です。 大赤斑後部の暗柱(フック)はほぼ消失しましたが、月前半はSEB南縁の後退暗斑が大赤斑を回って前方へ流れ出ていました。

[図2] SEBの活動状況と復活したNTB
中央から左にmid-SEB outbreakの乱れた白雲が広がっている。黒点はイオの影。北半球ではNTBが復活し、NEB北縁は少し乱れている。撮像:眞島清人氏(沖縄県、30cm)
[図3] 2024-25シーズンの土星
撮像:阿久津富夫氏(フィリピン、45cm)、渡辺真一氏(新潟県、35cm)、森田光治氏(滋賀県、32cm)、鶴海敏久氏(岡山県、35cm)、伊藤了史氏(愛知県、30cm)、熊森照明氏(大阪府、35cm)

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