天文ガイド 惑星の近況 2025年7月号 (No.304)

堀川邦昭、安達誠


おうし座の木星が夕暮れの一番星として輝いています。 天頂近くにはかに座に移った火星も見えますが、年初の接近時に比べるとだいぶ暗くなりました。 一方、明け方の東天には土星が昇ってきます。 春本番となりましたが、寒冷渦の影響で天候もシーイングも悪く、惑星面の詳細を捉えるのが難しくなっています。

ここでは4月下旬までの惑星面についてまとめます。 この記事中では、日時は世界時(UT)、画像は南を上にしています。

火星

火星の視直径は7"と、最接近時の約半分になりました。 遠日点を過ぎて、火星は北半球の夏至に向かっています。

北極冠はかなり小さくなってきましたが、まだはっきりと見ることができます。 これまではひと塊でしたが、4月14日以降は2つに分離しています(図1)。 シーイングが良ければ眼視でも見えそうですが、かなり微妙です。

北極冠は黄色っぽく見えることが多く、昔からそういう傾向があります。 表面をダストが覆っているのではないかと考えられています。 画像処理で白くしてしまうと、火星全体の色調が実際とは違ってしまうので、眼視で確認したうえで、実際の色に近くなるように処理してください。

火星のLsが30°付近になると、低緯度地方に赤道帯霧が発生するようになります。 今シーズンも発生し、現在は最盛期になっています。 青(B)画像では低緯度に白いバンドがはっきりと写ります。 RGB合成した画像では白雲として目立ち、下の暗色模様が淡く仕上がりますが、実際は白雲はかすかで、暗い模様が若干淡くなる程度です。 またフィルターの波長域によっても写り方が異なります。

この雲はそれほど高くないため、Tharsis (80〜120W, +10)にある成層火山の周囲では、火山の山頂部が雲の上に出て、赤黒い斑点として見えます(図2)。 シーイングが良いと眼視でも見ることができ、筆者は今シーズン、2回赤黒い姿を見ています。

[図1] 2つに分離した北極冠
一番下の明るい部分が北極冠で、左右に分離しているのがわかる。赤画像。撮像:ルドルフ・ヒルブレヒト氏(35cm、ドイツ)
[図2] Tharsisの成層火山
矢印の先に暗斑が3個並んでいるのがTharsisの火山群。赤画像。撮像:佐々木一男氏(宮城県、40cm)

木星

今月の木星面では大赤斑(GRS)周辺の活動が注目されます。 3月下旬、大赤斑の後部の南赤道縞(SEB)南縁が大きく盛り上がり、後方から大赤斑に覆いかぶさるような暗柱(フック)が再び形成されました。 まもなく大赤斑の前方には濃い暗条が伸長を始め、4月下旬には30°超える長さの南熱帯紐(STrB)となっています。

昨年7月と今年1月にもフックが出現しましたが、短期間の不完全な活動に終わっていました。 STrBを伴う本格的な活動は、昨年4月以来、1年ぶりです。 フックの活動期間は、ひと月から半年以上とかなり幅があるので、今回の活動がどの程度続くか注目されます。

mid-SEB outbreakは、体系II=120〜240°の範囲でSEB中央〜北部に白斑や暗柱が多数見られます。 先端部は位置を特定できませんが、大赤斑後方の白雲領域(post-GRS disturbance)を北側から押し上げているように見えます。 今後は過去のoutbreakと同じように、post-GRS dist.の北にくさび状に潜り込むような動きをすると予想されます。

赤道帯南部(EZs)の攪乱領域(SED)は、本陣にあった白斑が目立たなくなり、それに代わって今月は体系I=210°付近のSEB北縁にリフト(裂け目)が見られるようになりました。 この位置は従来の本陣よりも20°ほど前方になります。 本陣が前方へジャンプしたのか、ドリフトが変化したのか、今後の観測で明らかになるでしょう。

NTBs jetstream outbreakの活動が終息し、北温帯縞(NTB)は赤茶色のベルトとして復活しました。 ベルトにはまだ濃淡があり、I=70°付近には大きな暗斑も見られます。 outbreakの影響を強く受けた北赤道縞(NEB)北部は、まだかなり乱れていて、各所で北縁が侵食され、細く見えるところもあります。 またNTBの北側では北温帯(NTZ)が薄暗く、北北温帯縞(NNTB)南縁の暗斑群はほとんど見られなくなりました。 outbreakの影響はかなり広い範囲に及んだようです。

[図3] フックの形成とSTrBの伸長
大赤斑後部に大きな暗柱(フック)ができ、前方にSTrBが伸びている。撮像:伊藤了史氏(愛知県、30cm)

土星

土星の新しい観測シーズン(2025-26シーズン)が始まりました。 合明け間もない3月23日に環の平面が地球を通過して環の消失が起こり、現在は環の平面をはさんで、太陽が北側を照らし、地球は日の当たらない南側を見るという状況になっています。

画像を見ると、本体中央を暗い直線状の環が横切っています。 本体の左右にも環は存在し、条件が良ければ半透明のC環やカシニの空隙を通った光が光斑として見えるそうですが、薄明中かつ低空では厳しいようです。 それでも強調処理された画像では、かすかに環を認めることができます。

5月6日には太陽を環の平面が横切って環の消失が起こり、その後は太陽が環の南側を照らすようになるので、明るく細い環として見えるようになるでしょう。

[図4] 環が消失した土星
太陽の当たっていない環の裏側から見ているため、環は実質的に消失状態にある。ただし、土星の正面では環の裏側が黒いラインとして見えている。赤+赤外画像。右は強調画像で、土星本体の両側に環が淡く見える。撮像:クライド・フォスター氏(ナミビア、35cm)

前号へ INDEXへ 次号へ