天文ガイド 惑星の近況 2025年10月号 (No.307)

堀川邦昭、安達誠


真夏のようだった梅雨が明け、本格的な夏になりました。 うお座の土星が14日に留となり、観測の好機を迎えています。 しし座の火星は西天低くなり、観測は厳しくなっています。 一方、明け方の東天には木星が昇るようになり、新しい観測シーズンが始まりました。

ここでは7月下旬までの惑星面についてまとめます。 この記事中では、日時は世界時(UT)、画像は南を上にしています。

土星

土星は環の傾き(B)が-3.6°となり、今シーズンの極大を迎えました。 合の前、今年1月頃の土星を南北さかさまにしたような見え方で、東西両端でカシニに空隙が弧を描いているのがわかります。 太陽に対する傾き(B')も1°を越えました。 まだ本体よりもかなり暗いですが、少しずつ明るさを取り戻してきました。

土星本体では、暗い環をはさんで赤道帯(EZ)が明るく見えています。 明るさは一様ではなく、南側は北側よりも少し薄暗くなっていて、明暗境界として赤道紐(EB)と思われる薄暗いラインが通っています。

その外側の太いベルトは南赤道縞(SEB)と北赤道縞(NEB)です。 両ベルトとも、赤道側のエッジは明瞭ですが、極側は拡散しています。 中〜高緯度にはベルトともゾーンともつかない色調の異なる淡い明暗が並んでいます。 赤外や高解像度の画像では細いラインがたくさん現れ、名称に困ってしまいますが、南北45〜50°付近に幅のある薄暗い縞を南温帯縞(STB)、北温帯縞(NTB)と呼ぶことにします。

先月号でふれた南緯50°の白斑は、今月初めも観測されました。 精査したところ、体系IIIに対して1日あたり-12°という高速で前進していたことがわかりました。 土星は赤道ジェットが極めて強いのですが、南緯50°付近にも+100m/sを越える大きなピークがあり、白斑はこのジェットストリームに乗っていたようです。 最後の観測は7月5日で、とても短命でしたが、土星の南半球が見えるようになってから初めての追跡可能な白斑となりました。

今月はテティス(Tethys)、レア(Rhea)などの衛星の、土星面経過が頻繁に捉えられました。 これらの小さな衛星の経過は、土星面の明るさに埋もれてしまいがちですが、メタンバンドの画像では、とても明瞭に見ることができます。

[図1] 土星とその衛星
土星の環はかなり開いたが、本体に比べるとまだ暗い。ディオーネ(D)が土星面を経過中で、土星の周囲にはテティス(T)、エンケラドゥス(E)、レア(R)といった衛星が見られる。撮像:熊森照明氏(大阪府、35cm)

火星

火星の日没時の高度は30°台となり、暗くなってからの観測は大気差のために火星像が虹のようになって、模様の確認が困難な状況です。 火星は表面輝度が高く、空が明るくても模様を捉えることができるので、熱心な観測者は日没前から観測を始めています。 筆者も太陽高度が10°くらいの時から観測していました。

火星の視直径は4"台と小さくなりましたが、観測は継続されています。 低緯度地方の白雲はやや淡くなりました。 Lsは113°になったので、暦の上からも順当な変化です。

遠日点を過ぎたこの時期は、ダストストームが起こりにくいのですが、6月29日に愛知県の伊藤氏が北極冠近くにダストストームを発見しました。 発生場所はCydonia(W340〜5, +53)付近で、今シーズン、ローカルダストストームが頻繁に見られた領域です。 翌30日には南に広がり、東西方向にも拡大している様子が捉えられました。 実際に発生した日は、29日の1〜2日くらい前と思われますが、観測がなく、正確な発生日や場所の特定はできませんでした。 すでに、多くの観測者が今シーズンの観測を終えていたため、詳しい様子が分からず残念なことでした。

Hellas(275〜315W, -30〜-60)が非常に明るくなっています。 火星が大きく北に傾いているため、Hellasは火星像の南端になり、盆地全体を見ることはできませんが、見やすい位置に来た時は青白く明るく見えています。 明るさやフィルター観測の結果を見ると、雲ではなく霜だと思われますが、非常によく目立っています。

本格的な夏になり、シーイングの安定した日が今まで以上にあると思います。 できる限りの追跡をお願いしたいと思います。

[図2] Cydoniaのダストストーム
矢印の先にダストストームが写っている。撮像:伊藤了史氏(愛知県、30cm)

木星

まだ断片的ですが、木星面の状況がわかってきました。 大赤斑(GRS)は体系II=76°付近にあり、赤みも強く明瞭です。 後部の暗柱(フック)を起点とする活動はまだ続いていて、南熱帯紐(STrB)は濃淡があるものの、かなり長く伸びているようです。

大赤斑後方の南赤道縞(SEB)には、乱れた白雲がII=150°付近まで広がっています。 mid-SEB outbreakの活動が続いているようです。

赤道帯(EZ)には今シーズンも濃く長いフェストゥーン(festoon)が多数伸びています。 I=260°付近のSEB北縁にシャープなリフトと細いフェストゥーンがあります。 EZ南部の攪乱領域(SED)の本陣ではないかと思われます。

北半球を見ると、北赤道縞(NEB)が幅広く、北縁にはバージと呼ばれる暗斑や白斑が見られます。 NTBs jetstream outbreakで濃化復活した北温帯縞(NTB)は南組織が早くも淡化を始めているようです。 北温帯(NTZ)はかなり薄暗く、一部の経度ではNTB北組織から北北温帯縞(NNTB)が融合し、1本のベルトのように見えています。

[図3] 今シーズンの木星面
右側に大赤斑が見える。フックの活動は続いていて、STrBも明瞭。中央子午線上で南北に並ぶ白斑は、下が永続白斑BAで、上はSSTBの白斑A1。撮像:山崎明宏氏(東京都、40cm)

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