1971年は10cm反射望遠鏡を購入して惑星観測を始めた年でした。この年の夏に火星の大接近をひかえ、眼を慣らす目的で木星のスケッチを3月から始めました。もちろん、始めたばかりですから細かな模様も見えるはずもありません。でも、3枚目のスケッチには「いつもの顔をしていた」というなまいきな観測コメントを残していました。1枚目に続いて大赤斑をスケッチした6枚目では「これまでたまたま経度が合わなかっただけだ」と書き留めていました。それからは、観測した木星の経度を天文年鑑で計算するようになりました。
それでも今見えた大赤斑は次回はいつ観測したら見えるのかが分かりません。そこで、星座早見盤ならぬ木星経度早見盤を作ろうと思い立ちました。大赤斑は第II系に属していて、自転周期は9時間56分です。これは1日で約870°つまり2.42回自転するわけですが、見かけ上1日経つと経度は約150°ずつ進みます。惑星観測の先輩の火星経度早見盤を見たことがありましたので、それを真似てみようと考えました。
木星には経度が第I系と第II系の2種類があるので、木星経度早見盤では2つの経度を表裏に張り合わせたものとしました。ベースの円盤には0-360度の経度を目盛っておきます。その上に重ねる円盤には午前9時(0時UT)の1日毎の経度位置の目盛り(1日で約158°(I)/150°(II)回転)を書きます。2枚目の円盤には1時間毎の経度位置の目盛り(1時間で36.6°(I)/36.3°(II))を書きます。早見盤を使う場合は、天文年鑑に載っている各月の1日の午前9時の経度になるように、1枚目の円盤を回転します。次に2枚目の円盤の9時の位置を観測日に合わせます。これで針を動かすだけで、その日の任意の時間の経度を読み取ることができます。
ある日時の木星の経度を計算するためのソフトウェアとかWEBページを見かけることがありますが、逆に大赤斑がII=80度にあるとして、次回はいつ見えるのかを知ることはなかなか面倒です。木星経度早見盤を使うと、これも簡単です。観測したい時間に針を合わせ、目的の経度になるように2枚目の円盤を同時に回転します。この時の9時の目盛りが示す日付が、その模様の見える日付を示しています。
パソコンやインターネットの普及した現在でも、自作した道具というのは愛着がありますね。
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木星経度早見盤 |
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