天文ガイド 惑星サロン2003年2月号 (No.5)堀川邦明

シューメーカー・レビー第9彗星の衝突の思い出
シューメーカー・レビー第9彗星(SL9)の衝突は、歴史に残るイベントでしたが、実際に衝突するまで、あのような衝突痕が現れるとは思えませんでした。むしろ、衝突の「きのこ雲」が木星のリムでirradiating spot(輝点)になると予想し、日本で最初に観測できる7月17日16時のC核の衝突に注目しました。

日中のイベントなので、太陽から目盛環を使い木星を導入しようとしましたが、鏡筒が三脚に当り失敗。しかし、間に金星があることを思い出し、金星で望遠鏡を反転させてから、再び鏡筒を振ると見事に見つけ出すことに成功しました。白昼見る木星は青空が透けて、まるで空に漂うクラゲのようでした。結局、irradiating spotは見ることができず、夕方から曇って2晩ほど悪天が続きましたが、その間、衝突痕が見えるとのメールが飛び交い、私の周りだけが雨なのではないかとイライラさせられました。

ようやく19日になってK核痕を見たのですが、衛星の影を除けば、あんなに暗い模様は初めてで、まるで木星に穴が開いているような印象でした。その後、目が慣れると衝突痕が一様ではなく、核状の暗部とそれを取り巻く半暗部の構造がわかるようになり、20日にはGとL核痕がまるで「の」の字を描くように並んでいる様子を捉えることができました(スケッチ参照)。

それからひと月ほどは、衝突痕を追いかけるとともに、新聞や雑誌の取材を受けたり、メールで集まる眼視観測データをまとめて宇宙科学研究所の月惑星シンポジウムで発表したりと、大忙しの日々でした。

当時は夏の盛りで、町内のあちこちから聞こえてくる盆踊りの太鼓や歌をBGMに衝突痕のスケッチを取ったもので、今でも盆踊りの曲を聞くと、G/S/Rの複合痕を思い出してしまいます。

G核痕とL核痕のスケッチ

1994年7月20日 11時27分(UT)
体系I=245.0 体系II=292.8
16cm反射 200x倍 堀川 邦昭 観測

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