天文ガイド 惑星サロン2003年7月号 (No.10)伊賀祐一

アポダイジング・スクリーンの効果
京都市亀岡市の前田和義氏からアポダイジング・スクリーンを使用した5月3日の木星画像を受け取りました。このスクリーンを使用した画像は明らかに画質が向上しています。前田さんの体験をご紹介しましょう。

恒星像を高倍率で観察すると、完全な点とならないで広がりを持った円盤(エアリーディスク)と、その周りに回折環(ジフラクションリング)が何重にも見えます。反射望遠鏡では斜鏡が中央部を遮蔽するので、屈折望遠鏡よりもこの回折環が強く現われてしまいます。惑星の見え方としては回折環の影響はコントラストの低下になると言われています。 アポダイジング・スクリーンというのは、望遠鏡の開口部の周辺の光量を絞ることによって、焦点像の回折環ができるのを抑えるものです。作り方は簡単で、網戸用のメッシュや金網を、半径を変えて円形に切り抜いたものを2-3枚重ねることで、周辺部の光量を減らすものです(画像1)。光量は全体として減少しますが、分解能は落とさずに済みます。

実際の見え方としては、コントラストが増して惑星の模様が見え易くなり、口径が大きくなった気がするそうです。また、なぜかシーイングの影響を受けにくくなったそうです。画像2を見ると、同じ機材で10分違いですが、フィルターを装着した右の画像は分解能が良くなっています。惑星専用に比べると斜鏡径が大きいので、フィルターの効果が出たのではないでしょうか、とのことです。前田氏の場合は35cmと口径も大きく、一般的にアポダイジング・フィルターが効果を上げるかどうかは分かりませんが、挑戦してみる価値がありそうです。

画像1 アポダイジング・スクリーン


画像2 フィルターの効果

左:フィルター無し、右:アポダイジング・フィルター装着画像

【参考文献】
インタラクティブ・アストロノミー,Vol.3,p156-162(1995)
友柚工房 http://www.rnac.ne.jp/~tomoyu/

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