天文ガイド 惑星サロン2003年8月号 (No.11)池村俊彦

火星の発光現象についての考察
2001年6月8日に米国フロリダにおいてエドムの発光現象が観測されました(図左)。私は太陽−火星−地球の角度(i)に着目して調査したところ、火星の見かけの中央付近で起こった発光現象のほとんどが4〜6゜でした。2001年6月の時は5.1゜でした。これまで、火星面の中央付近で観測された発光はエドムとソリス付近とヘラス北部の3ヶ所だけです。2003年大接近では南極がこちらを向いているため、ソリス、ヘラス北部が発光の候補となります。2回以上発光が記録されているソリス付近をプロットしたのが図右です。

もし、火星が金属球面鏡であったなら、1958年は-12゜付近のB点が光るはずでした。実際の発光点はB点より上に(南に)4゜ほどの場所 -16゜付近だったと考えられます。今回はB点の緯度が-20〜-22゜ですので、ソリス付近が候補と考えられます。太陽−火星−地球の角度(i)が最も小さくなるのは8月28〜29日の頃です。iの角度7゜以内で経度が92.7゜(ソリス付近)になる候補を算出してみました。表の時刻の前後30分ぐらいの時間帯がソリス付近発光候補の予想時刻となります。角度(i)が最も小さくなる時には日本からソリス付近は18:00頃になり、火星は東空の低空にあり観測は困難です。ハワイ、アメリカ西海岸が有利な位置になりそうです。

iの角度が最小になる付近の8月20日から9月3日頃まではできるだけ長時間監視し、もし発光を観測したなら、年月日時分秒を10秒程度の精度で記録してください。どこが光ったのか、写真を撮影するなど画像の記録も大切です。この予想時刻はソリス付近のみにしぼってみたものですが、ヘラス北端でも観測された記録があります。それ以外の火星の-21゜付近どこでもありえます。とにかく見かけの火星面の中央付近です。もし、発光を観測したら、正確で詳細な記録がされることを望みます。

日時(JST)i
2003/08/27 16:45(JST) 05.03
2003/08/28 17:23(JST) 04.86
2003/08/29 18:01(JST) 04.86
2003/08/30 18:40(JST) 05.02
2003/08/31 19:18(JST) 05.34
2003/09/01 19:56(JST) 05.79
2003/09/02 20:34(JST) 06.33
2003/09/03 21:12(JST) 06.95


図 ソリス付近の発光予想図
エドムでは1954年7月1日(佐伯恒夫氏)、2001年6月8日(Parker等)、ソリスでは1958年11月11日(福井実信氏)が発光を観測している。図でSは地球中心点、Bは幾何学反射点、Sは太陽中心点を示す。 (拡大)

参考図書 恒星社厚生閣 天体観測シリーズ 火星とその観測

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