天文ガイド 惑星サロン2006年2月号 (No.41)伊賀祐一

火星の大気大循環

地球での大気は、赤道付近で暖められた空気が上昇し、それが高緯度に移動して地表付近に下降し、さらに地表付近を赤道まで戻るという循環を行います。地球では自転の影響で、赤道からの上空の風は西よりの風となり南北緯度30度付近で下降し、赤道に向かう風は東よりの風(貿易風)になります。この大気循環は1735年にG.ハドレー(英国)が説明したことからハドレー循環と呼ばれます。

火星にもハドラー循環がありますが、大気が薄いために赤道から極付近までをカバーする大循環となります(画像1)。特に、北半球の冬にはハドレー循環は強く、夏の南半球で暖められて上昇した大気は、北極付近まで運ばれて下降し、今度は地表付近を赤道に向かいます。NASAのMGS探査機がとらえた2002年1月(Ls=315)のクリセのダストストーム(画像2)は、ハドレー循環の下層気流によって引き起こされたものです。

2005年10月18日(Ls=309)に発生したダストストームは南半球を全周の半分までおおいましたが、これも北半球のクリセを起点とするものでした。これもハドラー循環の下層気流によって引き起こされたダストストームです。また、下層気流に乗ったダストストームは、しばしば赤道を越えて、南半球まで拡がることもよく知られることです。

画像1 火星のハドレー循環

画像提供/ NASA、撮影/2005年10月28日

画像2 MGSのとらえたクリセのダストストーム

画像提供/ NASA、撮影/2002年1月24日

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