天文ガイド 惑星サロン2006年4月号 (No.43)伊賀祐一

火星の北極地方の雲

NASA/JPLの火星周回探査機マーズ・グローバル・サーベイヤ(MGS)は、1997年9月12日に火星軌道に達し、以来8年間(5火星年)に渡って観測を継続しています。MGSは、搭載する火星オービターカメラ(MOC)によって、火星の毎日の天気の変化を記録しています。この8年間でもっとも興味深い観測の一つが、火星面で繰り返し再現する気象パターンであると発表されています。

ここに示す4枚の画像(画像1)は、毎火星年に繰り返されている気象現象の例で、北半球の夏の季節の北極地方を撮影したものです。それぞれの画像は1火星年をおいて撮影されていますが、いつも夏に、しかも同じ地形の上にリング状の雲が観測されました。このリング状の雲は、毎回ほぼ同じ時期か、あるいは少し早い時期に現れています。

1999年は機器の不調からハッブル宇宙望遠鏡(HST)の画像ですが、この雲は我々アマチュアでも撮影でき、火星の台風を地上からとらえたと喜んだものでした。しかし、MGSの観測では、地球上の台風と形は似ていますが、このリング状の雲は回転しないそうです。つまり、午前中に極付近の異なった気流がぶつかって雲ができ、午後にはちりぢりになるか消失します。

火星で繰り返される気象パターンには、毎年同じ場所で1-2週間の違いで発生するダストストームや、春から秋のほぼ毎日の午後に発生するアマゾニスのダストデビル(竜巻)などがあります。

画像1 4火星年に繰り返し出現する北極地方の雲

画像提供/ NASA

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