天文ガイド 惑星サロン2008年3月号 (No.66)竹内 覚

惑星像の周辺減光について

望遠鏡で惑星像を見た時に気がつく、もっとも顕著な特徴は何でしょうか? 土星のリングは例外ですけど、木星なら縞模様、火星なら極冠や様々な模様でしょうか? 実は、それは周辺減光なんです。

実際のデータを見てみましょう。図1の木星画像で中央子午線に沿って明るさの分布を調べてみると、結果は図2になります。これを見ると、もちろん縞模様に対応した凸凹も(主に低緯度に)見られますが、一番の特徴は周辺で(この場合は両極で)暗くなる傾向、つまり周辺減光です。

[図1] 波長724nmでの木星画像
2005年5月27日 11:37UT
I:154° II:197° III:245°
28cmカセグレン、BITRAN BJ40Lで撮影(北が上)


面白いことに、図2で SEB、NEB(横軸で±0.2付近)の部分の明るさは0.4強ですが、STZ以南やNTZ以北はゾーンであっても0.4以下になっています(北半球を見ると分かりやすい)。つまり明るいゾーンと思っている領域が、実は暗いベルトよりも本当は暗いという、ちょっと不思議な結果になっています。


[図2] 中央子午線に沿った明るさの分布
縦軸は反射率I/Fに換算。横軸は木星の中央子午線に沿った長さで、
南極を-1、赤道を0、北極が1となるようにしている。(拡大)

どうも人間の視覚というのは、明暗や色彩というものを周囲の状況に応じて認識するようで、絶対的な指標とはなりません。つまり視覚は、周辺減光のような全体的な傾向は自動的に補正してキャンセルしてしまいます。代わりに縞模様のような細部の模様は、周囲と相対的な濃淡を敏感に感じて強調するようです。

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