ドリフトチャートは、模様の位置データ(経度)をグラフ化したものです。大気中
の雲や渦で構成される木星面の模様は、発生と消滅を繰り返していますし、表面
を流れる風によって、時間と共に位置が変わりますので、グラブ化することで、
ひとつひとつの模様を識別し(同定)、その運動(経度変化)を追跡することが可能
になります。木星の継続的な観測がスタートした20世紀初頭から続く、伝統的な
解析手法のひとつです。
ドリフトチャートは、縦軸に日付(時間)、横軸に経度を取り、CMT観測や画像の
測定で得た個々の模様の経度をプロットすることで作成されます。個々の模様を
識別しやすくするために、各緯度帯毎に分割したり、模様によってマーカーの色
や形を変える工夫が必要です。通常の科学論文などでは、時間(T)を横軸に取り
ますので、プロの眼には奇異に映るらしいのですが、木星面を切り取って日付順
に並べたイメージと同じなので、アマチュアにはむしろ感覚的に理解しやすい表
現方法です。
ドリフトチャートを作成すると、個々の模様の動きを識別できますので、模様の
自転周期を算出することが可能になりますし、画像を測定したデータであれば、
緯度情報を加えて、体系IIIに対する風速(m/s)を得ることができるようになりま
す。また、本文中で述べたSTB南縁の暗斑群のような、通常とは異なる動きをす
る模様を発見したり、図のように、移動速度の急激な変化を捉えたりすることも
可能です。
本文記事の中にさりげなく出てくる自転周期や風速の数値は、眼視によるCMT観
測や撮像された画像の測定を、ひとつひとつ地道に積み上げた結果として、得ら
れるものなのです。
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