これまで木星会議では、毎回、木星やその他の惑星に関わる講演をしていただく
ゲストを迎えてきました。今年は月惑星研究会創立50周年という特別な年に当る
こともあり、イギリスから英国天文協会(BAA)の木星課長、ジョン・ロジャース
博士(John H. Rogers)を招くことに成功しました。
BAAは19世紀に設立された、世界で最も古いアマチュア天文団体のひとつで、木
星課は1890年代から詳細な研究報告を発表しており、これまでに数多くの優秀な
観測者を輩出しています。20世紀初頭にはCMT観測を普及させて組織的な観測を
始め、木星の観測方法や解析手法を確立させてきました。現在、我々が知ってい
る木星現象のほとんどは、BAAによって発見されたものです。
ロジャース博士の本職は分子生物学者で、イギリスの名門ケンブリッジ大学で教
鞭を取っています。木星ではアマチュアとして1983年からBAAの木星課長を務め
ており、BAAの観測をまとめるだけでなく、数多くの研究をプロの論文誌Icarus
などに発表していますし、1995年に出版された彼の著書「The Giant Planet
Jupiter」は、これまでの木星観測データの集大成とも言える本で、今や世界の
木星アマチュアのリーダー的存在となっています。筆者がロジャース博士に会う
のは、今回が3度目ですが、彼は常に気さくで礼儀正しく、知的な印象を受ける
人物です。
会議での講演は、「木星の赤い斑点について」というタイトルの大赤斑を代表と
する木星面に見られる赤い斑点の総括で、北北温帯(NNTZ)の小赤斑では新しい知
見もあり、大変興味深い内容でした。
これを期に、日本のアマチュアとBAAとの交流が進むことを期待したいものです。
|