大赤斑(RS)は木星大気中にある巨大な渦です。緯度はほぼ一定ですが、経度方向
は木星のどの部分にも固定されておらず、19世紀に発見されてから現在までに、
木星面を10周以上も回ってしまいました。
図1は筆者のCMT観測から作製した、1977年以降のRSの経度変化で、この30年間だ
けでも、経度が大きく変化してきたことがわかります。古くからRSは濃化すると
後退し、淡化すると前進すると言われていて、1970年代末から1980年代半ばに著
しく前進した時期は、南熱帯攪乱などが出現し、RSは赤斑孔(RS Hollow)に近い
見え方でした。近年は年に5〜10°の割合で後退を続けていますが、時々見られ
る「ふらつき」は、RS前方にストリークなどが出現した時期に重なります。また、
1980年代後半から続く後退運動は、近年スピードアップする傾向にあり、今シー
ズンは10°超とこれまでで最も大きく、SEBの淡化とRSの濃化という見え方の変
化に符合します。
RSの運動でもうひとつ有名なのは、1960年代にプロの精密な観測によって発見さ
れた90日周期の振動運動です。振幅が1°未満なので検出が困難でしたが、近年
は数多くのアマチュア画像によって、それが可能になっています。図2は月惑星
研究会の画像から得た2003〜2005年のRSの経度変化で、周期的な変動がありあり
です。これから得られた周期89.95日、振幅0.8°という結果は、かつてプロが発
表した数値とぴたりと一致します。近年のアマチュアの観測技術の向上ぶりは、
目ざましいですね。
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