6月3日にアンソニー・ウェズレー氏によって観測された木星への小天体の衝突現
象は、衝突の瞬間を捉えた史上初めての観測となりました。しかし、第一報の直
後は、衝突痕がまったく観測されなかったため、本当に天体の衝突によるものな
のか、懐疑的な意見もありました。つまり、地球と木星の間の宇宙空間で起こっ
た何らかの発光現象が、木星面に投影されたという見方です。
その後、クリストファー・ゴー氏も、この発光現象を捉えていることがわかり、
上記の議論に終止符が打たれます。オーストラリアとフィリピンという、地球上
で何千キロも離れた観測者が、木星面の同じ位置に輝点を観測したということは、
この現象が木星表面に極めて近い場所で起こったことに他ならないからです。
ところが、二人の画像がWeb上で流れると、新たな疑問が浮かび上がりました。
ゴー氏の画像に写っている輝点が、ウェズレー氏の画像よりもわずかに赤道に近
く、SEBの中央よりにあるのです。やはり、この現象は木星表面ではなく、宇宙
空間で起こったのでしょうか?そうであれば、地球と木星の間にある物体を見た
場合、北半球にいるゴー氏の方が南半球のウェズレー氏よりも南側に見えるはず
です。でも、画像では逆のセンスになっています。これは一体どのように解釈す
ればよいのでしょうか?
カラーで撮像しているゴー氏に対して、ウェズレー氏はRGBの三色で別々に撮像
し、後でそれらを合成して画像にしています。今回の現象は、青色光(B)で撮像
しているときに起こりました。青色光は他の波長よりも屈折率が低いので、青画
像は赤や緑の画像よりも地平線とは反対側、南半球では南側に偏ることになりま
す。そのため、三色の画像を合成する際に、輝点が本来の位置よりも南側にズレ
てしまったのではないかと筆者は考えています。さて、皆さんはどのように推理
しますか?
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