天文ガイド 惑星サロン2011年12月号 (No.111)阿久津富夫

私の惑星観測

現在、仕事の関係で、南国フィリピンのセブ市に長期滞在中です。セブは東経 123度、北緯約10度の常夏の地で、南十字は30度位の高度になります。緯度が低 すぎて赤道儀の極軸が下がらず、JP赤道儀に傾斜台ピラーを付けて傾けています。 ここではジェット気流はなく大気は安定しているので、惑星観測場所としては、 相当に良い場所と思っています。世界的に知られる惑星観測家のChristopher Go 氏とはセブに住むようになってから知り合いとなり、観測情報は常に入ります。

セブは赤道に近いので南国特有のスコールがあり、昼夜関係なく急に曇って雨が 降ることが多く、常にインターネットの衛星画像を見ています。国柄、野外での 天体観測は、治安上、好ましくなく、現在住んでいるコンドミニアムの屋上で行 っていますが、夜中の観測は慣れるまで不気味でした。屋上からの東側は水平線 近くまで見え、惑星の合後、いち早く観測が出来ます。

望遠鏡は当初のC8からC14にアップしましたが、台風の直撃を2回受け、2回CPを 大破しました。今は運良くCPだけ貸してもらい観測を続けています。光学系はベ ストな状態ではありませんが、気流に助けられ、観測画像を得ています。現在の 撮像システムはDMKカメラとRegistax処理が基本です。観測対象は惑星全般です が、木星をメインとして、CH4、UV、IR、Bのフィルターワークによる画像とカラ ー画像を得ています。昨年11月のSEB攪乱では、発生時から日々変化する白斑を メタンバンドで撮り続け、地の利を生かした観測結果が残せました。

今年の木星はほぼ天頂まで上ります。像が止まって見えたことが数回あり、目か ら鱗が落ちるような木星像でした。眼視ではガリレオ衛星の模様も良く見えます し、月面であればアルプス谷の中央谷、シリウスの伴星などは簡単に見分けられ ます。


[図1] C14による観測風景
ほとんど水平の極軸に注目
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[図2] フィルターワークによる木星画像
昨年11月のSEB攪乱発生時の観測
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