NTBsのジェットストリームは、北緯23.8°の北温帯縞(NTB)南縁を流れる木星面
で最速のジェットストリームです。風速は通常でも+120m/s、後述するアウトブ
レーク発生時には+160m/sに達します。通常は、斑点などの模様がほとんど見ら
れないため、地上からの検出は難しいのですが、数年から数十年に一度、激しい
活動が起こって流れが可視化されます。これがNTBsジェットストリームのアウト
ブレーク現象(NTBs jetstream outbreak)です。1880年にイギリスのデニング
(W.F. Denning)によって発見されて以来、北温帯流-C(North Temperate
Current C)、通称「カレントC」と呼ばれる現象として知られており、今回は13
回目の活動となります。
典型的なアウトブレークの活動は、淡化したNTB中に出現する明るい白斑で始ま
ります。この白斑はメタンバンドで極めて明るい高高度の雲で、木星内部からの
噴出しを思わせる模様です。先行白斑(Leading Spot)と呼ばれ、体系Iに対して
-5°/day(自転周期で9h46m〜47m)という超高速で前進します。その後方では暗斑
群が出現します。体系Iに対して-1°/day(自転周期で9h49m)と、先行白斑よりも
ゆっくり前進し、この速度差によってNTBの濃化が広がって行きます。暗斑群は
時に大きく発達することがあり、「まるでNTBを耕しているようだ」という表現
がピッタリです。発生から2〜3ヶ月でNTBは全周で濃化復活します。アウトブレ
ーク後のNTBは赤みが強くなり、NTrZは著しく暗くなることがあります。
1970年から1990年までの間、アウトブレークは5年おきに起こっていました。そ
の後、17年ほどの休止期間を経て2007年に再発したのですが、2012年の今年に再
び観測されたので、5年サイクルは維持されているようです。
今回の活動は非常に大規模のようですが、合に重なって重要な時期に観測がでな
かったのは、大変残念に感じます。
|
[図1] 耕されつつあるNTB |
1990年のアウトブレークによって濃化中のNTB。筆者のスケッチ |
|