土星の一番の特徴である環は、見た目に大変美しいものです。15年に1度起こる
環の消失を除くと、普段は一定の見え方で変化には乏しい印象ですが、意外と細
かく変化します。多くは太陽−土星−地球の位置関係による幾何学的な現象です
が、結構面白いものです。
環の平面は黄道面に対して26°傾いています。地球から見た土星面の中央緯度
(環の傾き)をB、太陽から見たそれをB'と呼びます。B'が土星の公転に合わせて
滑らかに変化するのに対して、Bは地球の位置によって環の平面に近づいたり離
れたりするため、増減を繰り返します。そのため、BとB'にはわずかな差ができ、
それによって環や環の影に微妙な見え方の違いが生じるのです。
最近の土星をよく観察すると、A環の外側にそれ以前にはなかった暗い縁取りが
見られるようになりました。これは土星本体に投影された環の影です。年初はB
>B'でしたが、4月に逆転してBがB'よりも小さくなり、太陽より北側から土星を
見るようになったので、これまで環に隠れていた影が見えるようになったという
わけです。B環の内側にも幅広く薄暗い帯がありますが、こちらは半透明なC環で
す。3月以前の画像を見ると、現在とは反対側のB環の内側、薄暗いC環との境界
に沿って暗いすじが存在することがわかります。
土星の環の変化は幾何学的な要素が大きいので、表面模様の変化と違って、明確
な原因を求めることができます。小さな変化を見つけて、頭をひねって考えるの
も楽しいものです。
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[図1] 土星の環の影の見え方 |
3月はB環の内側に影が見られたが、現在はA環の外側に変わっている。撮像:阿久津富夫氏、熊森照明氏 |
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[図2] 地球と太陽の位置関係の模式図 |
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