天文ガイド 惑星サロン2014年3月号 (No.138)田部一志

閃光観測の今後の展望

2012年と13年の2年間、大きな望遠鏡を使わせていただいて、集中的に木星を観測する機 会を得ました。いうまでもなく、閃光現象を捉えることが目的であったわけですが、残念 ながら現時点では閃光と言える現象は捉えられていません。まだ、観測時間は合計100時 間に満たないわけで、見つからなくても当たり前とも言えます。彗星捜索を志す人が最初 の彗星を見つけるまでに要する時間が数百時間と言われるので、100時間ではまだまだで す。

閃光観測の意義は、衝突の頻度を知ることによって、木星付近での微小天体の分布を知る 手がかりが得られるところにあります。観測しても現象が起こらなかったということも、 データとしては同様に貴重なものです。また、副産物としてメタンバンドによる木星像が 長時間得られました。こちらもまだ解析は手付かずですが、2年分の比較を行えば何か新 発見があるものと期待できます。

これから数年間木星の観測好期が冬になります。大きな望遠鏡ほどシーイングの影響を受 けやすいものです。人手や観測条件の面で効率的に観測を行うためには、20センチくらい の屈折の光学系を備えたリモート天文台をシーイングの良いところに置くことだと思いま す。インターネットで操作とデータ取得ができるようになれば、観測効率は飛躍的に向上 します。年間数個以上の閃光が捕らえられれば、所期の目的である微小天体の分布に関す る情報も桁違いに向上します。地球を三等分して条件の良いところを探すとすると、ハワ イ、カリブ海、セイロン島という案はいかがでしょうか。カリブ海はかつて火星観測者ピ ッカリングが観測に訪れたところです。セイロン島はモールスワースが20世紀初頭に滞在 して木星のCMTを6000個も得たという伝説の地です。ハワイは今では天体観測のメッカで す。暑くもなく、寒くもなく、夜露に濡れることもなく、眠くもなく、腹も減らず。。。 アマチュアの観測もこんな味気ないものになってしまうのでしょうか。

[図1] 西はりま天文台での観測風景
スリットから木星が見えている。

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