木星面では多種多様な現象が見られます。一見、気まぐれに変化しているようですが、長
期間観測すると、一部の現象にははっきりとした周期性があることがわかります。
周期的に見られる現象で最も有名なものは、SEBで起こる南赤道縞攪乱(SEB攪乱)です。
1943年から1964年まで、ベルトの淡化→SEB攪乱発生→濃化→再び淡化という活動パター
ンが、ほぼ3年周期で繰り返され、この間、8回のSEB攪乱が観測されました。
その後、SEBの活動パターンは変化し、1970年代以降は、約3年間隔でSEB攪乱が2回発生し
た後、濃く安定なSEBが14〜15年続くというパターンが現在まで続いています。本文で触
れたSEBの濃化時に起こるmid-SEB outbreakは、SEB攪乱とよく似た現象で、乱れた白雲が
ベルト内部に広がって行く様子は、SEB攪乱と変わりありません。そのため、SEBの淡化時
に起こるのがSEB攪乱、濃化時に起こるのはmid-SEB outbreakという見方もありますが、
mid-SEB outbreakの発生間隔はバラバラで、SEB攪乱のような3年周期は見られません。
北半球でよく知られている周期的な活動は、NEBの拡幅現象です。1988年に始まったこの
活動サイクルでは、4〜5年周期でベルトが太くなったり細くなったりします。これまで
7回観測されました。
NTB南縁を流れる木星面最速のジェットストリームの突発的活動(NTBs jetstream
outbreak、北温帯流-Cとも呼ばれる)でもはっきりとした周期性が見られます。1970年代
以前は長い間、10年間隔で活動していましたが、1970年から1990年までは5年間隔に短縮
すると共に、NTBの淡化とoutbreakによる濃化が交互に起こるという、SEBとよく似た活動
パターンが見られました。その後、この活動サイクルは停止してしまい、2003年までNTB
は濃く安定したベルトになってしまいましたが、2007年に17年ぶりにoutbreakが起こると、
2012年にも再び発生しましたので、5年周期が復活した可能性があります。
このような活動サイクルの周期や変化の原因は全くわかっていません。今後も観測を積み
重ねて、周期性の謎に迫りたいものです。
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[図1] 2010年のSEB攪乱 |
非常に強い周期性を示す現象の代表例。筆者のスケッチより。 |
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