天文ガイド 惑星サロン2014年5月号 (No.140)安達誠

火星の探査機の観測とその利用

火星の上空には数こそ少ないですが、地球と同じように探査機が周回しています。とりわ け、アメリカのMRO(Mars Reconnaissance Orbiter)は、火星を南北方向に飛びながら、表 面の様子を撮像していますので、その画像から火星面の様子が手に取るように分かります。

図1を見ると、南北方向に破れたような穴ができていますが、これは探査機で撮影できな かった領域を表しています。探査機の飛行高度は、火星に対して高度が低いため、一部を 撮像したものをつなぎ合わせて合成されているため、時々このような状態になることが起 こります。

毎日の画像を比べながら点検すると、面白いことがいくつも出てきます。一つの例として 北極冠の様子をみてみましょう。

図2からわかるように、たった1日で、こんなにも大きな変化が記録されます。極冠は砂で 覆われたり、融けたりしているらしいのです。地球からの観測では、視直径の大きなとき でないと、ここまでの記録は困難なので、MROの画像は極冠周辺の変化を知る大きな手が かりを与えてくれます。

また、山にかかる雲の様子から、気流の流れを推測することも可能です。火星年での一年 間を追跡するだけでも、大気の運動が見えてきそうに思えます。探査機の画像から得られ るものが、まだまだありそうです。

[図1] MROによる火星画像
2013年11月の2日分の観測。裂け目のような黒い部分は撮像されなかった領域。

[図2] わずか1日で生じた北極冠の変化
左は2013年12月18日、右は12月19日の同じ位置の画像。左の画像は北極冠からの吹き出し(矢印の先)が見られる。

前号へ INDEXへ 次号へ