1年1ヶ月毎に衝が訪れる木星は、合を過ぎて夜明け前に東の空に現れてから、次の合の前
までがひと続きの観測期間となり、英語でApparitionと呼はれます。辞書を引くと「出現」
という単純な意味の他に、彗星などの回帰的な出現という説明がありますので、そこから
の転用と思われます。
日本語ではApparitionに相当する適当な言葉がなく、発音もアパリションと語呂が悪いの
で、いろいろな表現に意訳されています。このページでは(観測)シーズンと表現していま
すが、木星や土星に特有な表現で、火星では使われません(2014年の火星などと接近の年
を使うようです)。
シーズン=季節ですが、Apparitionには季節という意味はありませんので、日本独自の造
語(和製英語)と思われます。そこで、いつ頃からシーズンという言葉が使われるようにな
ったか調べてみました。
古い文献をみると、1960年代半ば以前は年度、観測期などと呼ばれ、シーズンという表現
は見られません。シーズンという言葉が初めて登場するのは1960年代終わり頃で、仙台の
小石川正弘氏が東亜天文学会(OAA)の観測報告の中でシーズンという言葉を使っています。
1970年代になると天文ガイドの記事でも使われるようになり、一般化したようです。筆者
が大学天文連盟で活動していた1970年代終わり頃は、シーズンという表現が定着していま
した。おそらく、1960年代後半に山形や仙台を拠点とする東北惑星研究会で使われ始め、
その後、大学天文連盟や月惑星研究会に伝わったのではないかと思われます。
これは筆者の想像ですが、プロ野球の公式戦でもシーズンという言葉を使うので、誰か野
球好きの惑星観測者が野球から借用したのではないでしょうか。合明け、木星が東天に昇
るのを待ち構えるように、「観測シーズン開幕!」と競って観測を始める様子がよく表現
されているように思います。
|
[図1] 昨年の木星会議の集合写真 |
木星会議は観測シーズンに1回のペースで開催されます。今シーズンは6月21〜22日に大阪大学豊中キャンパスで開かれます。 |
|