天文ガイド 惑星サロン2014年8月号 (No.143)永長英夫

展開図やマップを作成して木星観測を楽しむ

木星の画像が得られたなら、その画像を解析することで値打ちのあるものとなり、楽しみ 方も増えます。私はフリーソフトのWinJUPOSを使い、物理的なデータを得るだけでなく展 開図を作成し、視覚的に木星面の状況把握を行いやすくし、また複数の展開図からマップ を作成して、木星面全体の概要把握に役立てています。

展開図の作成は長らく月惑研究会の伊賀祐一氏作成の惑星展開図プログラムソフトを活用 してきましたが、近年は経度データとともに展開図が作れるWinJUPOSを使っています。 WinJUPOSで展開図を作成し、StellaImageを使い比較明合成をしてマップに仕上げていま す。WinJUPOSによる展開図やマップの作成方法は、天体観測の教科書「惑星観測」編に詳 述されています。

観測は常にマップ作成を念頭に置き、展開図の継ぎ目がなめらかになるよう、原則1時間 おきに撮影しています。木星の自転は約10時間ですので、1時間で経度は約36度動きます。 全周マップにするには最低8時間の連続観測で9画像取得できれば一自転分のマップが完成 します。実際には衝の前後以外不可能ですので、普段は2〜3日の連続観測からマップを作 ることになります。木星の大気は東西方向に絶えず複雑に動いており、衛星現象もあるの で、模様の不一致が必ず起こりますが無視しています。

展開図やマップは様々な活用ができます。作例はここ数年間の衝に近い頃のGRS付近の様 相をまとめたものです。GRSの様子や経度の変化、ベルトの状況等を把握することができ ます。木星には表面の模様が大きく変わってしまう現象が度々起こります。それらは比較 的長期に渡って展開されるので、その変貌を展開図やマップにしてまとめたり、それらを 使って動画にすることでリアルに再現できたりもします。

[図1] 2009〜2014年における大赤斑周辺の変化
展開図にすることで大赤斑やベルトの見え方や位置の変化を正確に比較することができる。筆者撮像・作成。

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