反射望遠鏡の形式は問わず、筒内気流は惑星観測者の悩みのタネです。 品質の良い光学系でコリメーションが完璧でも、筒内気流があれば像は大きく乱れてしまいます。 熱容量の大きな主鏡は、周辺環境の温度低下に遅れてゆっくりと低下します。 その温度差により、鏡面に沿った境界層流が生じ惑星像を悪化させます。
この課題を克服するために様々な試みがあります。 @ 主鏡温度を周辺環境温度にできるだけ早く追随させる。 いわゆる主鏡冷却ファンの役割です。 だんだん環境温度に近くなりますが、周辺温度が下がるといたちごっこで追いつかない事もあります。 A 境界層流を拡散して影響を低減する。 主鏡面周辺に風を流すことによって境界層流を拡散し、空気密度差による光学的な不均一さを解消します。 鏡筒内で温度差があると対流が起きて悪影響を及ぼしますが、ファンはそれに対処する万能薬として効果のある方法です。 B 主鏡温度を環境温度より下げる。 これを能動冷却(アクティブクーリング)と呼びます。 主鏡から立ち上る境界層流の発生を防ぎます。 (a)冷房した部屋に置いて望遠鏡全体を冷却しておく、(b)TEC(Thermo Electric Cooler)を使う、(c)アイスバッグで主鏡付近を冷却する、という方法などがありました。
現在、スポットクーラとTECを使って、アクティブクーリングの実験を行っています。 どちらも主鏡に冷気を直接当てず、主鏡の周辺を強力に冷却して、じんわりと間接的に伝熱冷却する方法を新しい試みとして模索しています。 詳しくは私のBlog(iwalab.blogspot.jp)を参照してください。 Celestron C14 SCTでの実験レポートですが、他の鏡筒でも応用できると思います。
[図1] アクティブクーリングの実験の様子 |
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