エルマー・ジェイコブ・リース(Elmer Jacob Reese、米国、1919〜2010)は、高校卒業後家族が経営する食料品店で働きながら15cm反射望遠鏡を自作して木星を観測、従軍のために中断はありましたが、1940年代後半には世界的に知られた木星観測者となりました。 1946〜47年の南熱帯攪乱や南温帯縞の3個の永続白斑の初期変化経過などの貴重な観測があります。 1949年、月惑星観測者協会の初代木星課長となり、ドリフトチャートと展開図を組み合わせて数多くのリポートを機関誌に報告、そのベースとなるCMT(中央子午線経過)観測はとても正確でした。 1953年英国天文協会の機関誌に「木星固体核の自転周期への手がかり」と題した論文を発表、南赤道縞攪乱が木星固体核からの噴出現象であるとして、その自転周期を求めようとする仮説で世界から注目されました。
その後も観測を継続しアマチュアとして大きな成果を上げましたが、1963年ニューメキシコ州立大学のC.トンボー(Clyde Tombaugh)とB.A.スミス(Bradford A. Smith)から請われてプロの道へと進み、同大学天文台の61cm望遠鏡で撮影された写真の測定データを解析し、その結果を専門誌Icarusに次々と発表しました。 大赤斑の渦構造の発見、北温帯縞高速移動斑点の再発見などを含み、Voyager 1、2観測計画の基礎資料として採用されました。 また金星上層大気のスーパーローテーションや土星の減衰振動斑点の発見などもあります。 温厚な彼は若い研究者達に適切な助言を与え誰からも慕われました。 1977年天文台を退職、その後も観測を継続し一生を木星観測に捧げました。
C/1941B1:フレンド・リース・ホンダ彗星の発見者、小惑星8377に”Elmerreese”の名が付けられています。
[図1] E.J. リース |
1980年代半ばの写真 |
[図2] E.J. リースのスケッチ |
左:1947年2月11日 23:11 中央は南熱帯攪乱。右:1947年6月9日 16:25 赤斑孔と大きな永続白斑。15cm反射による。 |
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