天文ガイド 惑星サロン
2019年9月号 (No.204)
堀川邦昭

評価が難しい大赤斑の赤さ

大赤斑は文字通り赤みの強い斑点として知られています。 その赤さは変化しやすく、大きな幅があります。 現在は鮮やかなオレンジ色で、年々濃くなる傾向にありますが、私が木星を始めた1970年代半ばはもっと濃い赤色で、レンガ色という形容がぴったりでした。

しかし、1980年代になると大赤斑の赤みは薄れて、時には真っ白な赤斑孔(RS Hollow)になったこともありました。 そのため、当時の観測者は「あれは大赤斑ではない、大白斑だ」と言っていましたし、1970年代の赤さについても、誇張されているという意見が聞かれました。

スケッチや文字で客観的な記録を残すのはとても難しく、自分の印象が強調されがちになります。 それは後に記録を参照する側でも同じで、自分が実際に見たものを基準として評価してしまうようです。

名著、The Planet Jupiterの著者であるピーク(B.M. Peek)でさえ、19世紀の大赤斑の赤さについて、「現存するスケッチの赤い色調は誇張された印象を伝えていると確信する」と懐疑的なコメントをしています。 もし、彼が今の大赤斑を見たら、腰を抜かすかもしれません。

現在は大赤斑の赤さについて、疑問を持つ人はいないと思われます。 最近、「赤斑孔はそんなに白かったのか?」という質問を受けました。 時代は変わったのだと、つくづく思ってしまいました。

[図1] 大赤斑の見え方の変化
左) 1970年代の赤みの強い大きな大赤斑(アリゾナ州立大学 月惑星研究所による)。中央) 赤斑孔の状態。中央に赤みが残っているが、ほとんど白い。右) 現在の大赤斑。オレンジ色が鮮やか。

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