天文ガイド 惑星サロン
2021年12月号 (No.231)
田部一志

2021年9月13日の木星閃光イベント

木星には2〜3年に1度程度の頻度で閃光現象が観測されます。 閃光の原因は微小天体の衝突(氷を仮定すると直径数メートル)と考えられます。 このような現象は2010年(2回)、2012年、2016年、2017年、2019年と観測されています。 直径10メートル以下の天体が木星近傍にどのくらい存在するか? ここまで小さいと地上から観測することは不可能ですが、はからずも木星自身がデテクタ(検出器)となって、手掛かりを与えてくれます。 それが閃光現象です。

観測から、微小天体の衝突頻度の「真の値」をどのように推定するかが問題になります。 これまでの例では、1つの閃光を観測したのは1〜4観測者でしたが、今回は、ブラジル、フランス、イタリア、ドイツ、ルーマニアで9つの独立の観測が記録されました。 いずれも閃光を狙っての観測というわけではなく、衝直後の見やすい位置にある木星を撮影していての出来事です。 ということは、木星はかなりの時間帯モニターされており、観測数はイベントの実数に近づいている(桁の話です)のではないかと考えられます。

地球から見えるのは木星の昼側です。 では、太陽と反対側となる木星の夜側はどうでしょう?  微小天体の軌道の特徴がどのようなものか全く情報がありませんが、太陽系の外側から飛来する天体が多いとすれば、夜側に衝突する方が多いかも知れません。 仮に同じ頻度なら、単純に倍となります。 木星の夜側を静止軌道上から観測する衛星があれば、暗い木星を背景に観測できるので、桁違いに増えることが考えられます。

[図1] 9月13日の閃光イベント
今回の閃光は9名の観測者によって独立に観測された。撮像:ハラルド・パレスケ氏(ドイツ、41cm)

前号へ INDEXへ 次号へ