天文ガイド 惑星サロン
2023年7月号 (No.250)
堀川邦昭

木星で起こる現象の周期性(4)

南熱帯攪乱(STr. Disturbance)は、南赤道縞南縁(SEBs)と南温帯縞北縁(STBn)を流れるジェットストリームが結合してできる南熱帯(STrZ)の暗部です。 1901年に発生したものが最大規模で、STrZの3分の2を覆い、約40年に渡って存続しました。 その間、大赤斑(GRS)との会合時に攪乱の前後端がジャンプしたり、SEBsの暗斑が攪乱前端でUターンする循環気流が観測されるなど、付随する重要な現象が多く知られています。

1901年の攪乱を例外とすると、寿命は長くても2〜3年で、最近のものは1年未満です。 2007年はSEBsの後退暗斑群が、攪乱前端で次々とUターンしてSTBn上を引き返していく循環気流が約70年ぶりに観測されて注目されました。 また、2016年の攪乱は大赤斑に追いついたので、前端がジャンプするかのように短期間で大赤斑前方に移動する現象が見られると期待されたのですが、不発に終わり、そのまま消失してしまいました。

この現象ははっきりとした周期性は見られませんが、近年は大雑把に10年くらいの間隔で発生しています。 次回は2026〜2027年頃かもしれません。

[表1] 南熱帯攪乱のリスト
1901年と1975年の間は省略した。*は不正確
[図1] 大赤斑と会合中の南熱帯攪乱
大赤斑の後方の暗部が南熱帯攪乱。この後、攪乱は大赤斑に行く手を阻まれて消失してしまった。撮像:永長英夫氏(兵庫県、30cm)

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