天文ガイド 惑星サロン
2024年2月号 (No.257)
安達誠

昔の火星面

今は、火星観測はオフシーズンとなっています。 この期間、火星の観測者は普段できないことを勉強する人が多くいます。 私は、昔の火星写真を元にして1905年までさかのぼり、地図の作成を行っています。 今から118年前の記録です。 この時代は、写真乾板と言って、ガラス板に写真の乳剤を塗り付けて長時間露出をすることで惑星写真を撮っていました。 フランスのムードン天文台が世界中で撮られたこの時代の惑星写真を集約して公開しています。

古くなるほど、火星全体をカバーできていませんが、部分的でも非常に興味深い姿を見ることができます。 図は1922年と2022年の火星で、100年を隔てた火星面の様子です。 特徴のよくわかるシルチスを中心に示しました。 シルチスは望遠鏡で見ると逆三角形の姿をしていますが、1922年はそこから左に大きな半円形の模様が出ています。 1911年にこの半円形の模様が見え始め、途中で中央部が見えたり消失したりするときもありましたが、1975年頃までの約60年余りの間見えていました。

火星の模様は大規模なダストストームが発生すると変化することが多いので、ダストストームが終わると火星観測者はドキドキするものなのです。

[図1] シルチス周辺の100年間の変化
1922年の地図の南北が切れているのは、火星の向きや極冠に覆われて見えなかったためです。

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